氏家幹人 祥伝社新書刊。

章別に夜語りするような形式で書かれた江戸の犯罪考。有名な盗人の話も興味深かったですが、昔も今も変わらない夫婦の機微や、現在の無差別殺人と同じような犯罪が江戸時代にもあった事に驚かされた。
武器を規制しても殺人が無くなる事はないけれど、被害を抑える為に身近に大量殺人が起こせる武器が少ないと言うのは効果があるんだなあと実感。
最後を締めるのは鼠小僧の話で、講談でしか知らない人物なので興味深くよみました。ここまでの色々な犯罪を見ていると、小柄で身のこなしが敏捷、頭が回って人好きのする顔立ち、殺傷は行わず狙うのは大名屋敷のみ、気前がよく盗んだ金品は散財して庶民の懐を潤わせる。
と言う鼠小僧が庶民から人気が出たのが何故かよくわかる。

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# by yamanochika | 2017-05-15 09:38 | その他読んだもの

カウンターポイント

サラ・パレッキー著 ハヤカワ文庫刊

25年前に起きた家庭内での殺人事件。高校時代に付き合いのあったフランクの依頼を受けたヴィクが、その殺人事件で服役し出所したばかりのフランクの母ステラを訪ねた直後に、殺人事件にはヴィクの従兄弟でNHLのスーパースターだったブーム・ブームが関係していると告発される。
ブーム・ブームの名誉を守る為、ヴィクは過去を探り始めるのだが…。

最近はスケールの大きな話の多かったシリーズですが、今回はシカゴの、ヴィクの育った界隈を振り返るシリーズの原点に戻ったような作品に仕上がっています。
年齢を重ねてかつてのような無茶はしない、年齢を感じる発言も増えたヴィクですが、大切な人を守る為奮闘する姿は健在。
ロティではないけど、彼女を諌めるべきか命がけで他人の他人の命を守る為に奮闘する事を賞賛するべきか迷ってしまう。
作中にシカゴ・カブスが関わっていて、章タイが野球用語になっているのにニヤリ。
ブーム・ブームはヴィクにとっても周りの人達にとってもヒーローであり、賞賛すべき人物であるけれど、同じように地道に正直に働いて家族を養っている普通の人達もまたヒーローであると言うメッセージ性の強い作品だと思います。
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# by yamanochika | 2017-05-15 09:02 | 海外ミステリ

失踪者

シャルロッテ・リンク 著 創元推理文庫刊

イングランドの田舎町に住むエレインは幼馴染のロザンナの結婚式に招待されジブラルタルに向かうが、濃霧のために空港に足止めされ、親切な弁護士宅に一泊したあと失踪してしまう。5年後、エレインを招待したロザンナは、ジャーナリストの仕事で失踪し行方が分からないままの人物について調査する為にイギリスに帰国する。やがてロザンナの下にエレインを知っているという男から連絡があり…。

いくつかの事件や問題が絡み合いながら最後に一つの事件にまとまっていく。元々は別のものだったものが故意に絡まり合わされてたというべきかもしれない。
失踪したエレインは家庭に問題を抱えており、彼女が事件に巻き込まれたと思う人物もいたものの、全てを捨てて失踪しても仕方がないと思われていた。彼女の事が再び調査されて明らかになっていくのは、そういった人物の背景だったり、登場人物たちの抱える問題であり、一つを除いて「事件」の要素は薄い。なので、ミステリとしてよりも人間ドラマとして読む話だと思う。
最終的にはこれしか考えられないだろうという結末に辿り着くのだが、そこにいくまでに色々な種が播かれているいるので、文庫のあらすじに書かれていたような衝撃的な結末とは感じなかった。

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# by yamanochika | 2017-03-12 15:24 | 海外ミステリ

かくして殺人へ

カーター・ディクスン著 創元推理文庫刊

初めて書いた小説が大当たりを取ったモニカ。しかし小説の内容の事で毎日のように伯母から小言をくらい、家を飛び出してロンドン近郊にある映画会社の撮影所に赴き、脚本を手掛ける事になる。しかし、手がける作品は彼女が書いた小説ではなく、別の作家が書いたミステリ小説。さらに、何者かに命を狙われて…。

灯火管制下にあるイギリスが舞台とあって、これまた第二次大戦の影響が強く出た作品。若い女性であるモニカと、ミステリ作家であるカートライトの視点から書かれていて、この二人のラブロマンスの趣も。なんというか、作中に出てくる作品自体には何の関係もない映画にまつわる話をしている二人組を含めて、非常に「映画的」な内容になっている。タバコを巡るトリックはなかなか面白い。

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# by yamanochika | 2017-03-12 14:19 | 海外ミステリ

貴婦人として死す

カーター・ディクスン著 創元推理文庫刊

戦時下のイギリスで、俳優の卵と人妻が失踪し2日後に遺体で発見された。心中事件として扱われるが、人妻と親しかった老医師ルークは2人は殺害されたものと信じ、事件について調査を進めていく。たまたまその地に滞在していたヘンリー・メルヴェール卿と行動を共にし、犯人探しを続けるのだが…。

第二次大戦初期を舞台にした作品。戦争が間近に迫ってくる前の話ではあるのですが、戦争の影響がそこかしこに見え、作中の犯罪にも影を落としている。崖に向かって続いている2組の足音。しかし、死亡した男女の死因を考えると、二人以外の人間がその場にいないのは矛盾している。
という「密室トリック」を崩すことが前提にあるように見えながら、実はトリックを解くことが主軸ではなく、「何故に」が一番のポイントになっているのがミソ。

しかし、HM卿のシリーズというとスプラスティック・コメディが浮かんでくるけど、本作も例にもれず。車いすに乗ったHM卿の巻き起こす騒動がすさまじい。思わず近所の犬に同情してしまう。これを映像で見たら面白そう。

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# by yamanochika | 2017-03-12 14:12 | 海外ミステリ

出口のない農場

サイモン・ベケット著。ハヤカワミステリ刊。

フランスの田舎町。車内に血の付いた車から逃げ出した怪しげな男ショーン。しかしショーンは森の中で罠に掛かり足に傷を負って近くの農場の娘マティルドに助けられる。マティルドは彼の看病を黙々と続けてくれるが病院に連れて行こうとはせず、一家の父親は家族以外を敵視している。農場には何が隠されているのか。
ショーンは怪我が治るまでの間農場の仕事を手伝い始めるのだが。

閉塞的な町の更に閉塞的な農場。のどかな雰囲気の中、何かが隠されており緊迫感が増していく。ショーンにもまた秘密があり、農場の秘密がじわじわ分かるのと同時に彼の過去もじょじょに明らかになる。
この話を読んでいると昔フランスであった殺人事件を思い出すんですが、家族の薄暗い秘密と救われなさが辛い。
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# by yamanochika | 2017-01-21 17:19 | 海外ミステリ

虎狼

モー・ヘイダー著。ハヤカワミステリ刊

キャフェリー警部シリーズ。
村から離れた別荘に着いた両親と娘の三人家族が警官を装った二人の男に拘束される。彼らの目的は何なのか。一家がいたぶられる中逃げ出した一家の飼い犬が偶然キャフェリー警部の元にたどり着く。ウォーキングマンの示唆を受けながらキャフェリーは飼い主を探し始めるのだか。

謎の二人組に拘束された一家のそれぞれの様子と、彼らを探すキャフェリーの活動が交互に描かれ、犯人の目的、どうやって一家にたどり着くか、彼らは救出されるのかが最後まで分からず緊迫感が続いて面白かった。
更に前作や前々作から続いているエピソードが話の背景として存在しており話に深みを増している。最後に明かされた兄の話をキャフェリーはどのように受け止めて処理していくのか。
続きが楽しみ。
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# by yamanochika | 2017-01-21 17:07 | 海外ミステリ

どぶとろ

半村良著 廣済堂文庫

本所で夜鷹蕎麦屋の老人が殺された。銀座の岩瀬家に仕える若者平吉は、主人がこの事件に関わっているのではないかと事件の背景を探っていくが。

初めに幾つかの短編があって最後に一つの長編として繋がっていく。短編を読んだときは人情物として読んでいたが長編で明かされる背景や結末はなかなか苦い。短編での登場人物に愛着があると尚更。平吉が選んだ未来はこれで良かったのか、何が彼の幸せだったのか考えてしまう。
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# by yamanochika | 2017-01-21 16:59 | 国内作家

ゼルプの殺人

ベルンハルト・シュリンク著 小学舘刊

三部作の3作目から読み始めたので、掉尾を飾る作品を読んだという実感はない。
東西ドイツが統合した頃を舞台に、まだ乖離しているドイツの実情、老いと向き合うゼルプ、ナチスの亡霊とユダヤ人というドイツならではのキーワードが混じり合いながら、白黒ははっきりしない結末へたどり着く。東ドイツが消滅し故郷を失った人々、老いていく自分を自覚する老人。物悲しい雰囲気が漂いつつ、日常に戻って人生は続いていく。読後の味わいが何とも言えない。複雑な物語が展開し、ミステリとしての謎解きも存分にあるのですが、純文学を読んだ気分。
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# by yamanochika | 2017-01-07 16:22 | 海外ミステリ

人形 ひとがた

モー・ヘイダー著 ハヤカワミステリ刊

ビーチウェイ重警備精神科医療施設は不穏な空気に包まれていた。かつてこの施設の職員だった小人の亡霊が現れるという噂があり、自傷行為で患者が死亡したことで職員にまで不安が広まっているのだ。施設の上級職員であるA・Jは悩んだ末に施設を退院した患者が関わっているのではないかと警察に相談するが…

キャフェリー警部シリーズもの。ですが、キャフェリーと施設職員のA・Jのダブル主役と言っても過言では無いほどA・Jとキャフェリーの2つの視点から話が進んでいく。点と点だった2つの視点が絡んだ時の収束の仕方、「物事は見かけ通りでは無い」という言葉が実感できる逆転の瞬間が見事。
A・Jの自己評価と他者評価の乖離がもどかしく、幸せになって欲しいと思いながら読んでいたので、最後の明るさを感じさせる終わり方にホッとした。
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# by yamanochika | 2017-01-07 16:09 | 海外ミステリ

日々読んだ本の記録。他映画、漫画等の感想などあれこれ。感想はネタバレありです。ご注意下さい。
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