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初版 金枝編 上・下

J・G・フレイザー著 ちくま学芸文庫刊

昔「九年目の魔法」という本を読んだときに、主人公が「金枝章」を贈られて夢中になって読んだという描写があり、それ以来読んでみたいと思っていたものの岩波文庫の5巻本はばら売りしてなかったので挫折。何か自分で買ったら読まずに積ん読本になっちゃいそうな予感がひしひしとしたんですよね。それで、今回「金枝編」としては一番短い初版が図書館にあったので借りてみました。上下本読むのにまるまる2週間かかったんですけど、なかなか興味深かったです。

要点としては、まずネミの司祭は何故後任者によって殺害されたのか。そして後任者が前任者を殺すときに金枝を折るのは何故か。そしてそもそも金枝とは何か。ということを定義づける為に、様々な伝説や各地で行われた儀式等を論拠していき、最終的な結論に至っているわけですが、この挙げられている例の数が半端な量ではない。主に本から得ている知識で、フィールドワークをしない机上の人類学と揶揄されたそうですが、この量の、自説に必要な文章を抜き出してくる知識量だけでも大した物だと思う。

各地で行われている儀式や、神の表象として奉られている人間の中に日本の「ミカド」の話も出ていて、それが合っていると思える部分とそれはさすがに違うだろうという部分があり、本の信頼度としてはそういうものだと認識していますが、各地での収穫祭、豊饒を願う儀式。神殺しや神の復活に関する伝説。そういったものがほんの少し形を変えただけで伝わっていること、また洋の東西を問わず似たような儀式があること、が人類の原風景が伝わってくるようで面白かった。
by yamanochika | 2009-02-21 11:29 | その他読んだもの
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