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パンズ・ラビリンス

スペイン内戦が終結した1944年。フランコ独裁政権へのゲリラ活動は続いており、ゲリラ討伐の為山中に赴任した義父の元に行くことになった少女オフィリア。臨月の母は体調を崩しており、孤独な少女は屋敷に残された古い石造りの迷宮で、牧神パンと巡り合う。パンはオフィリアを地下の魔法の王国へと誘い、その為には3つの試練を乗り越えなくてはいけないと言うのだが…

ファンタジーというべきなのか、ホラーに分類するべきなのか。パンや妖精の国は美しいお伽噺というには少し残酷で、どこか不気味。そもそも孤独な少女が見た夢なのか、実際に起きていることなのかが分からない。現実では、独裁的な義父がゲリラ掃討を続けており、少女の大切な人達は次々に傷付いていく。残酷な現実と、不気味で美しい妖精の国の映像が絡み合って、独特な世界を作り上げていく。

少女の妄想と断じるには、ベッドの下から見つかったマンドラゴラはどこから現れたのかが分からなくなるし、厳重に閉じこめられた少女がどうやって抜け出したのかが説明つかない。でも妖精の姿はオフィリアにしか見えないし、パンの誘いにはどこか罠があるようにしか感じられず、恐ろしい結末に向かって一歩一歩進んでいるのをじりじりしながら見守り続けるしかない。

現実にいる少女が魔法の王国に行くには一つしか方法がないわけで、物語は当然予想通りの結末を迎える。パンの誘いに乗らず、普通の人間として生きていき年を取る方が幸せだとは思うんですが、大切なものを全部失った少女にとっては一瞬の間に見た魔法の王国で永遠に暮らす方が幸せだったのかもしれない。美しい挿絵のついた童話を読んでいるかのような映像と、哀切な子守歌の旋律があわさってもの悲しい気持ちになる映画でした。
by yamanochika | 2009-02-27 02:11 | 映画
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