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イスタンブールの毒蛇

ジェイソン・グッドウィン著 早川文庫刊

「イスタンブールの群狼」から3年。スルタン・マフムート二世は病床にあり、世相は不安にざわめていた。そんな中、ヤシムの友人である八百屋が何者かに襲撃され重傷を負う。更に、知り合いになったフランス人考古学者が誰かに追われてヤシムの元に逃げ込んできた。背後にはギリシアの秘密結社があるのか?フランス人に関わったことからヤシムは事件に巻き込まれていくが…

前回がイェニツェリ軍団に纏わる話なら、今回はトルコの背景にあるもう一つの国、ギリシア独立運動に関わる話。そういえばギリシア独立があったのがこの頃だったのか。ヨーロッパ人が自分の想像上の古代ギリシア熱から現在のギリシア独立を支持した熱狂ぶりが、その後のアメリカによるベトナム独立支援に被る。その後の冷めっぷりにも。バイロンの詩は「君知るや南の国」でしたっけ。詩の中で語られている南の国は幻想的で美しいんだけれど、実際の南の国が美しいかどうかははなはだ疑問です。

現在でもギリシアにはお金持ちが多いけれど、それを考えると作中でのギリシア富裕層の多さに納得。

前作よりはミステリらしい描写が増え、ヤシムが伏線を解き明かしていく場面も多いのですが、やはり小説の主役はイスタンブールの街の描写。イスタンブールの表層を彩るアヤ・ソフィア。その下で街を支える地下水路。その対比が素晴らしい。それでいて、最後の、一番大きな謎の解決にはぞくぞくした。正確には暗示されているだけなんですけれども。

ところで、ヤシムが料理好きな為作中では色々なトルコ料理が出てくるんですが、どれも実に美味しそう。作者さんも料理好きな方なのか、材料を切るところからきちんと描写があって、料理の手際もいいんですよね。それで余計に美味しそうにみえるというか。トルコ料理食べてみたくなりました。

一時代を築いたスルタンが無くなり、三作目はあるのか?と思ったらすでに3作目まで発売されている模様。イェニツェリ、ビザンチンときたら次はエジプトか?
by yamanochika | 2009-07-30 01:19 | 海外ミステリ
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