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夜の試写会 リディア&ビル短編集


S・J・ローザン著 創元推理文庫刊

過去に「ジャーロ」、「EQ」等に掲載されたリディア・チンとビル・スミスが登場する短編を集めた日本独自の短編集。「冬、そして夜」が出版された時に、これ以降新作が発表されていない為事実上のシリーズ最終作という事で大変寂しい思いをしたのですが、本国で2009年に8年ぶりに新作が発売されたそうで、それを受けての短編集発売のようです。といっても日本で「冬、そして夜」が発売されたのは比較的最近なのでそれほど待ってはいないんですが、続きが読めるのは嬉しい。新作も日本で翻訳される予定だそうで楽しみです。

今回収録されているのは7編。二人が相棒として行動を共にするのは1作目の「夜の試写室」と最後の「虎の尾を踏む者」のみ。それ以外はビル、あるいはリディアが探偵として個人で活躍する話になっています。二人がそれぞれ一人で事件の解決に当たる話は読んだことがなかったので新鮮でした。白人の中年男性ビルが主役の場合はハードボイルド風味、リディアが主役の場合はコージー風味と言われればそうかもしれませんが、必ずしもそれだけじゃないんだけどなあ。

以下各話についてコメント



「夜の試写室」はリディア&ビルが活躍する王道な話。シリーズ初心者には入門編としてお奨めしたい。

「熱き想い」はビル・スミスもの。ハード・ボイルド風ながら恋人たちに明るさが感じられるのが救い。

「ペテン師ディランシー」リディア・チンものなので、中華街が舞台。中華街周辺でアメリカに来たばかりの貧乏人を騙すディランシーにリディアが仕掛けるコン・ゲーム。明るくて素直に楽しめる。ディランシーの性格がいい。

「ただ一度のチャンス」ビル・スミス。貧乏人が底辺から抜け出すにはスポーツの才能を持って生まれるしかない。痛切で一番やるせない話。

「天の与えしもの」ビル・スミス。痛快な話。天の与えしもの、に二重の意味があるのにニヤリ。

「人でなし」リディア・チン・これまたやるせない話。このやるせなさを無くすには、ただ頭が空っぽになるまで歩くしかない。

「虎の尾を踏むもの」リディア&ビル。中国人の人間関係を踏まえた話。二人揃うとやっぱり生き生きしてると思う。
by yamanochika | 2010-04-20 01:45 | 海外ミステリ
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