ジョー・R・ランズデール著 早川書房刊
ランズデールのMWA受賞作。こないだ読んだ「ダークライン」にも似たところがありますが、ランズデールの作風が変わったきっかけにもなった作品らしい。 1933年、テキサス州東部で暮らすハリーと妹のトムは、リス狩りに行った森の中で道に迷い、闇の中を謎の男に追いかけられた末に有刺鉄線で木に縛り付けられた黒人女性の惨殺死体を発見する。治安官を兼ねていた二人の父は捜査を開始しようとするが、黒人への差別が激しい中、捜査は難航する。やがて第二の殺人が。 老人となったハリーが老人ホームでかつての日々を回想する形で描かれている為、全ての場面がどことなくセピア色の美しさが滲んでいる。少年時代への懐かしさと森の闇の中に怪物が潜んでいるというホラー、そしてシリアル・キラーの跋扈するサイコ・サスペンスが入り混じった作品。暴力描写もすさまじいし、ホラー色も強いんですが、その全てが懐古され、美しく彩色されている感があります。それでいながらその懐古している人物が今は老人となり老人ホームで過ごしているという侘しさがあって、どことなく寂しいんですよね。 ミステリとして謎ときも十分に味わえるし、サイコ・サスペンスとしてもなかなか。「ダークライン」を読む前に読んでいたらもっと興奮したかも。
by yamanochika
| 2010-06-26 14:15
| 海外ミステリ
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