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悪童



カミラ・レックバリ著 集英社文庫刊

エリカ&パトリック事件簿3冊目。

ロブスター漁の網が7歳の少女を引き上げた。遺体はエリカの友人、シャロットの娘サーラ。まだ幼い少女を殺したのは誰なのか。家族、サーラの祖母と争いを続ける隣人、等々容疑者は浮かぶのだが…。

3冊目に入っていよいよ群像劇の印象が強い。親子関係にスポットが当てられて、エリカとパトリックをはじめとして、数々の親子が登場します。色々な親子愛が描かれるのだけど、挿話として挟まれている悪女アグネスの物語と本編の繋がりが意外でした。登場人物一覧にもいないし、どこで繋がるのかと思ったらここに来るとは。

登場人物の行動は、何故そこでこれをするというツッコミを入れたくなることがあるんだけど、読んでいる人間がそうすることを狙って書かれているんだろうなあ。アンナ本人が、自分がまるでエリカの引き立て役のように感じると述懐している場面があるんだけれど、実際読んでいてもよく出来た姉エリカの成功している人生とアンナを比べてしまい、どうしてもアンナに肩入れしたくなってしまう。2巻でアンナの人生の立て直しが来なかった以上、また後でアンナをメインにした話を予定しているのかもしれませんが。

そして本編は「悪童」というタイトルが意味心。サーシャはどんな子供だったのか?というのが一番心に残る。人によってサーシャへの感想、思いが異なるのだけれど、まだ幼いから、そして普通の子と違うところがあるからああいう行動をとってしまったのが、それとも……?と少し疑問が挟まれる終わり方なところが良かった。エリカやパトリックが嫌悪感を感じた人=悪い奴、いい印象のあった人=いい人、みたいな図式がまだ多いのでそこが気になるところ。前2作に比べると、複雑な人間も出てきたかなーとは思います。
by yamanochika | 2011-08-20 02:10 | 海外ミステリ
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