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三本の緑の小壜



D・M・デヴァイン著 創元推理文庫刊

長くて暑い夏の日、友達と海に行った少女ジャニスは帰って来なかった。翌朝、彼女は全裸死体で発見される。現場付近で目撃された診療所勤務の若い医師が容疑者として浮上するものの決め手がないまま崖から転落死する。一件落着かと思われたが、再び事件が…。

13歳のローティンの少女ばかりが狙われる連続殺人事件。センセーショナルな題材を扱いながらきちんと地に足が着いた構成になっていて読みやすい。何より、少女たちの造形がリアル。十代の少女らしい身勝手さや視野の狭さがきちんと書かれているし、周りからは粗暴で頭が悪い子と思われているシーリアの、自分を含めた他者への分析能力の高さには舌を巻く。当時作家さんにはこの年頃の娘さんがいたそうで、観察の成果が十二分に作品に表れているようです。

読み終わると、そういえば最初の方にそんな事が書かれていたと思い当たるわけですが、さらっとした所に伏線が張られていて、その辺が本当に上手い。しかし作中のマンディに対する父親、義理の母親の行動が精神的虐待なんですよね。白雪姫シンドロームというか。これもまた伏線になっているんだなーと感心した。
by yamanochika | 2011-11-19 09:04 | 海外ミステリ
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