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記者魂

ブルース・ダシルヴァ著 ハヤカワミステリ刊

生まれ育った町で地方記者をしているマリガン。最近町では古い住宅街で放火事件が続いており、幼い子供たちまで犠牲になるような恐ろしい事態になってきた。しかし放火事件の捜査に当たっているのは地元警察でも評判の大ばかコンビ。マリガンは事件の犯人を突き止めようと取材を続けるが…。

マリガンはもうすぐ40を迎えようかという男。胃潰瘍持ちで厄介な離婚訴訟を抱え、レッドソックスの熱狂的なファンで、ボロボロのSUV車に乗って、口では皮肉な事言いながらも愚直なまでに権力に媚びず、最後までぶれない。話の進みはゆっくりで、マリガンも何度も揺すぶられるわけですが、どんな事があってもぶれない姿勢のおかげで一本筋が入っていて読んでいて気持ちがいい。

最初は七光りと揶揄してまともに相手にしようとしなかったオーナーの息子、メイソンと徐々に絆ができていく様も、まさにベテランとルーキーのコンビの理想形。メイソンの成長具合もまた記者としてのあるべき姿が出来上がっていくようで、ここにも記者魂が存在しているのだと感じる。

終盤近くに「今は9回裏ツーアウト、あと10点取れないと、おれたちの負けだ」という台詞があるんですけれど、まさにここから10点を取る展開で、そのために前半のスローペースがあったのか!と腑に落ちた。負け犬のように扱われていた人たちが、諦めない不屈の精神を見せるというのはどんなお話でもいいものですね。

時々入る離婚訴訟中の妻、ドーカスからの嫌がらせの電話がいい味を出している。
by yamanochika | 2011-11-19 09:40 | 海外ミステリ
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