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特捜部Q キジ殺し


ユッシ・エーズラ・オールスン著 ハヤカワ・ミステリ刊

ミレーデ事件を解決し、一躍知名度をあげた特捜Q。今回扱うことになったのは何故か事件ファイルに紛れ込んでいた20年前に無残に殺害された10代の兄妹の事件だ。数年後に犯人が自首し、収監されており解決済とされている事件が、何故未解決事件のファイルに紛れ込んでいたのか?調べていく内に、兄妹の殺人が一人ではなく複数人による犯罪であったこと、更にその犯人たちがエリート階級の子弟で、現在は本人たちがエリートであるような人間である事が分かる。更に事件捜査を続けるうちに、上層部から捜査を取りやめるように圧力がかかるのだが…

キジ殺しというのは、キジ狩りのように意味なく残虐な行いという位の意味。本作では恵まれた環境にいる若者たちが走る残虐行為を指していると思われます。犯人たちの行動を肯定するでも否定するでもなく、心の複雑さを書いたような、そんな話。

特捜Qには新人ローセも加わり更にパワーアップ。変人が集まる部署らしく、ローセもかなり強烈。この位強烈じゃないと、カール・マークやアサドに負けちゃうからね。事件自体は、捜査を続けるカール達と、犯人グループのかつての仲間で今はホームレスをしている女性キミーの視点との二本立てで今回も話が進みます。人間心理の複雑さ、という点ではキミーが代表格になるわけで、男たちよりもキミーの行動が一番印象に残る。地道な捜査部分と、派手なアクションが上手く絡んでいて、テンポよく読めるのもいい。

事件の進行と共に書かれるカール自身の事件も少しずつ進展しており、これもいつか未解決事件として解決されるのかな。最後にハーディを引き取っている所にホロリときた。
by yamanochika | 2012-03-14 22:13 | 海外ミステリ
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