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空の都の神々は


N・K・ジェミシン著 早川文庫刊

遠い昔、世界を作った三柱の神々が争い、光の神イテンパスが黄昏の女神エネファを殺し、闇の神ナハドに勝利した。イテンパスは彼の巫女であったアラメリ家に力を与え、アラメリ家はイテンパスに支配された神々を兵器として使い、世界を統べるようになった…

そして現在、辺境の国ダールの首長イェイナはアラメリの住む空の都スカイに招かれる。彼女の母はアラメリ家を捨て、イェイナの父と結婚したのだ。イェイナは祖父デカルタによってアラメリの後継者候補の一人に指名される。デカルタの本当の狙いは何なのか?イェイナはスカイで人に奴隷として使役される神々に出会い、過去に起きた出来事をさぐっていくが…

アラメリ家の後継者を巡る陰謀と神々の争いとが上手く絡んだファンタジー。基本イェイナの一人称で語られているんだけど、そこにトリックがあるというか、一人称の使い方が上手い。圧倒的な力の差に拉ぎながらも抵抗を続け、活路を見いだそうとするイェイナの行動に目が離せなくなる。イェイナの出身地ダールはアマゾネスをイメージしているのか、母系社会で圧倒的に女が強い部族。もう敵わないとみせながら、最後に袖に隠し持った武器で攻撃をするというような策略の使い方が面白いんですよね。奴隷にされているとはいえ神々が、人間には及びもつかない存在であるのもいい。もっともキリスト教的な神ではなく、ギリシア神話やインドの神話みたいな、より人間に近しい神であるんですが。

そんなイェイナの現在の戦いと、20年前にアラメリのただ一人の後継者だった母が何を考えてダール人の父と結婚しアラメリを捨てたのか。そして母を暗殺したのは誰か、という謎ときが絡んでいてイェイナの母がしたこと、何が彼女に起きたのか分かった時に、イテンパスと神々との争いもまた結着がつく趣向。最後がかなりスッキリした終わり方なので3部作の1作目だというのに驚いた。この後どう続けるの?って所で。話の筋を見る限り、1作目は伝説の終わり、という感じなのかしら。既に2作目までは出版が決まっているようなので、10年後この世界がどう変わったのか見てみたい。
by yamanochika | 2012-03-17 12:25 | SF・FT
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