中村ふみ著 枻出版刊 幕末、新撰組に長州の密偵として潜り込んでいた一ノ瀬周は裏切り者として新撰組に切られて死にかけた所を希代の刺青師、宝生梅倖に助けられる。右の掌に梵字を入れる鬼込めによる不老不死の身となって。 という、二十歳そこそこの年齢のまま生きることになった周が、彫り師宝生閻魔として、幕末から明治、昭和までを生きていく話です。話の縦軸になるのは、閻魔と同じく鬼込めにより不老不死になった梅倖のもう一人の弟子、夜叉との対立で、何か節目の時に現れては閻魔にとって生きていくモチベーションとなる人物。人と深く関わりになりたくないといいつつ、誰かが困っていると首をつっこんでしまう。じじむさいのに子供っぽくて、人情味があるのが閻魔の魅力なら、夜叉の魅力は闇に生きるものの魅力。自ら死を望むか、一息に首をはねられるかしなければ死ぬことが出来ない。ならば自分を殺して欲しいと望む夜叉と、彼を憎みつつ殺すことが出来ない閻魔。二人の対立は昭和20年の長崎で、鬼よりも恐ろしい人間の所業に会うまで続いていく。 そしてもう一つの軸となるのは、かつて閻魔が新撰組で関わった男の娘で彼を生涯にわたって彼を支え続ける奈津と、彼の秘密を知った後も友人として、何くれとなく庇護してくれる牟田様など、閻魔を取りく人たちと閻魔との関わり。夏も牟田様もとても魅力的な人たちで、彼らが魅力的であればあるほど、いつまでも若いまま彼らに取り残されていく閻魔の辛さ、そして閻魔を残してしまう彼らの辛さが身に染みるのです。特に、最初は妹として、やがては閻魔を愛するようになった奈津の、まっすぐさと力強さ。老女になっても凛とした奈津の美しさが、爽やかな風味を残していく。 どちらかというとライトノベルよりの話なので、がっつりファンタジーや、強いスーパーヒーローを求めて読むと肩透かしを食らうかもしれませんが、面白かった。
by yamanochika
| 2012-05-23 22:44
| SF・FT
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