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アトリックス・ウルフの呪文書



パトリシア・A・マキリップ著 創元推理文庫刊

カルデスとベルシールの戦争を止めようと、伝説の魔法使いアトリック・ウルフが使った魔法は、恐るべき混沌を生みだした。呪文で創り上げられた闇の乗り手によってベルシールの王は殺害され、カルデス軍は逃げ去った。何が起きたのか分からないまま。20年後、魔法を学ぶため魔法学校にいたベルシールの王弟タリスは兄によって国に連れ戻されるが、その前に謎めいた呪文書を手にいれる。それはアトリック・ウルフが失踪前に書いていたもので、呪文によって隠されていた秘密が明らかに…。

登場人物の中に妖精の女王のような女性がいたり、妖精譚と童話の幻想世界が混ざったような話。特に呪文によって行方不明になった女王の娘、サローの日常と彼女が自分を取り戻すまでの物語は、昔ながらのお伽噺を連想させる。基本はタリスとサローのボーイ・ミーツ・ガールな話でもあるんだけど、読者には謎の答えが示されていて、登場人物たちがどうやってそこに辿りつくのかをやきもきしながら見守る感じ。

自分の行いを反省し姿を消したアトリック・ウルフがタリスを助けるために再び姿を現すのですが、そもそもタリスが厄介な目に遭う事になったのも、全部の出来ごとがアトリック・ウルフの行動が原因なのに本人が根本になかなか気付かないので若干イライラします。そのもどかしさや、異界にある森の雰囲気が味なんですけれども。
by yamanochika | 2012-08-27 21:18 | SF・FT
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