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キャサリン・カーの終わりなき旅

トマス・H・クック著 ハヤカワ・ミステリ刊

かつては旅行作家として失踪事件のあった土地を訪ね歩いていたジョージ・ゲイツ。しかし幼い息子を何者かに惨殺されて以来、息子を失った土地で地方新聞の記者として働きながらそこにとどまっていた。そんなある日元刑事に二十年前にこの地で謎めいた小説を残して失踪した女性詩人キャサリン・カーの話を聞く。新聞記事の取材の為に会った早老症の少女アリスがキャサリンに興味を持ったことから、アリスと共に彼女の失踪について調べることになるのだが、キャサリンの足跡を辿ると驚くほど自分の人生とつながっていて…。

あらすじとしてはこんな感じですが、旅に出ているジョージが相客にかつてあったことを物語っているという入れ子な構成。息子を失い、打ちひしがれたジョージは何度も息子の身に起きたかもしれないこと、自分が約束通りの時間に迎えに行けば息子が助かったかもしれないことを思い浮かべる。しかしジョージがそうして過ごした時間は既に過ぎ去っていて、現在のジョージは再び旅に出ているんですよね。

キャサリンは小説に出てくる謎の男によって殺害されてしまったのか、それとも警察が考えた通り自殺したのか。あるいはアリスが最後に考えたように、物語を本当にする為に失踪してしまったのか。ジョージの息子を襲った犯人を含め、作中では示唆されるにとどまり、最後は超自然の方向へ物語が飛んでいきます。全ての犠牲者に、その遺族の為に書かれた癒しの物語ではあると思うんですが、曖昧模糊で終わっていまいちすっきりしない。そのすっきりしない所までが味な作品。
by yamanochika | 2013-03-31 15:12 | 海外ミステリ
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