人気ブログランキング | 話題のタグを見る

逆さの骨

ジム・ケリー著 創元推理文庫刊

かつて捕虜収容所だった事もある古代遺跡の発掘現場で奇妙な遺体が発見される。イタリア人捕虜だったと思われる男は脱出用に作られたトンネルを収容所に向かって這い進んでいた上額を拳銃で打ち抜かれていたのだ。発掘現場の取材に来ていた新聞記者ドライデンは遺体の奇妙な状況に興味を覚え、男が何者だったのかを探ろうとする。しかし数日後、現場では新たな死体が発見され…。

過去と現在が交錯するミステリ。過去の出来事が現在につながっており、現在の出来ごとにより過去の犯罪が暴かれる。その構成が圧巻。ドライデンが進める調査の他に、何人かの人物による視点で過去の出来事が挿話されているが、全ての真相が分った後に読みなおすと最初に受けた印象からガラっと変わるのも面白い。

ドライデンを取り巻く人間関係も変動しており、特に妻ローラとの関係の変化が話に陰影を与えているように思う。かつて水没した車の中に置き去りにされ、意識を失ったまま眠りについていたローラ。身動きは取れないまま意思疎通が可能になったらむしろそのせいで、ドライデンとローラの関係には齟齬が生じてくる。何とも言えないジレンマ。
by yamanochika | 2014-04-24 01:08 | 海外ミステリ
<< 鐘楼の蝙蝠 俺様ティーチャー 18 >>