カミラ・レックバリ著 集英社文庫刊
エリカ&パトリックの事件簿第8弾 フィエルバッカのヴァール島で寄宿学校を営む家族が復活祭の昼餐を残したまま失踪した。1歳になる末娘エッバだけを残して。 事件は未解決のまま35年が経過し、大人になって結婚したエッバは幼い息子を事故で失い、傷付いた心を癒そうと島に戻ってくる。彼女が島に戻った途端に放火事件が発生。35年前の事件になにか関係あるのか。 かつて学校にいた寄宿生達との関連は。 不幸な母と娘の挿話を挟みつつ、過去の事件と現在起こりつつある事件を捜査するパトリック達。パトリック、エリカをはじめ中年になった寄宿生達、エッバとモッテンと大人数の視点が入り混じり複層的な展開になっている。その中でも印象に残るのは親子の関係と子供を亡くした夫婦の悲哀。 エッバとモッテン夫婦を筆頭に、ユスタは生後数日で我が子を亡くし、アンナは事故でお腹の子供を亡くしている。 色々な人たちの子供への哀切が伝わってきて辛い。それと、もう1つの視点が第二次大戦におけるスウエーデンが中立であったという欺瞞への批判。これは他の作家が書いたミステリでも出てきている事だけど、スウエーデンにはナチスシンパが多く存在し、国内ではユダヤ人への差別があった。この問題が現代の政治情勢とも絡まって作品に大きな影を落としている。 作品内の主題となっている訳では無いのですが、この作品の出版直前にノルウェーで起きた事件がまさに作品内で起きそうになった事件であり、今の北欧のリアルなんだなあと感じた。
by yamanochika
| 2016-11-20 11:55
| 海外ミステリ
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