カーター・ディクスン著 創元推理文庫刊
戦時下のイギリスで、俳優の卵と人妻が失踪し2日後に遺体で発見された。心中事件として扱われるが、人妻と親しかった老医師ルークは2人は殺害されたものと信じ、事件について調査を進めていく。たまたまその地に滞在していたヘンリー・メルヴェール卿と行動を共にし、犯人探しを続けるのだが…。 第二次大戦初期を舞台にした作品。戦争が間近に迫ってくる前の話ではあるのですが、戦争の影響がそこかしこに見え、作中の犯罪にも影を落としている。崖に向かって続いている2組の足音。しかし、死亡した男女の死因を考えると、二人以外の人間がその場にいないのは矛盾している。 という「密室トリック」を崩すことが前提にあるように見えながら、実はトリックを解くことが主軸ではなく、「何故に」が一番のポイントになっているのがミソ。 しかし、HM卿のシリーズというとスプラスティック・コメディが浮かんでくるけど、本作も例にもれず。車いすに乗ったHM卿の巻き起こす騒動がすさまじい。思わず近所の犬に同情してしまう。これを映像で見たら面白そう。
by yamanochika
| 2017-03-12 14:12
| 海外ミステリ
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