人気ブログランキング | 話題のタグを見る

愚か者の祈り

ヒラリー・ウォー著。創元推理文庫刊。

公園で発見された若い女性の遺体は、顔が砕かれていた。身元不明のため捜査は難航するが、若手刑事の発案により顔の復元が試みられ、一気に被害者の身元が判明する。女優になるためにこの町を出た被害者。絶世の美女だった彼女は町に戻ってくるまでの空白の5年間、何をしていたのか。そして彼女を殺したのは誰なのか。刑事達は彼女の過去を探っていくのだが…。

事実を重視するタフなベテラン警部と、推理で飛躍していく若手刑事の組み合わせでハードボイルド風味の強い作品。当時の大事件だった「ブラック・ダリア事件」に影響を受けたのではないかと言われていますが、被害者の女性の経歴は確かにそんな感じ。砕かれた骨を組み立て、あるいはCGを使って被害者の顔の復元を行うのは今では捜査の常套手段になってそうなのに、この考えを夢物語、と一蹴されているんですよね。その辺が時代を感じます。

最後に明かされる意外な事実がすごいと評判の話ですが、意外さというか犯行の切り崩しポイントという点では「事件当夜は雨」の方が感心しただけれど、これも伏線の作り方が上手い。作品中に登場するエピソードが二重、三重の意味を持って使われ、最後の切り札にもなっているのに驚いた。
by yamanochika | 2006-06-01 23:39 | 海外ミステリ
<< 失踪当時の服装は 事件当夜は雨 >>