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明治天皇1~4

新潮文庫版。ドナルド・キーン著。

日本文学の研究者である著者が明治天皇が生まれてから死ぬまでを、天皇の残した和歌からその心情を推測しつつ書いた伝記。最終巻の解説で、第三者の立場から明治日本を客観的に見つつ、天皇の実像に触れようと努力する著者を持てた私たちは幸運だ、というような言葉があるのですがまさにその通りだと思う。恥ずかしながら、私キーン氏のウン十分の一も日本の文化や歴史に詳しくないと思います。一つ一つの章に、丁寧な脚注があるのも嬉しい。

文章を読み、注を読みと行きつ戻りつしながら読み進めましたが、君主にとってもっとも必要な資質というのは優秀な臣下を見抜き、臣下に対して嫉妬することなく、その能力を存分に生かせる場所を与えることが出来るか否か、ということだと感じる。日本が、日清戦争で勝利した後、急に評価が高まったことから「日本人が平和に文化を愛好していた頃は、欧米列強は日本を野蛮人の国として相手にせず傲慢にふるまっていた。しかし今、日本が戦争を始めた途端、日本を文明国扱いし評価しようとしている。」という言葉が紹介されていましたが、実際皮肉な話で、この後の軍事化は、全世界的にそういう時代だったから、としかいいようがない。

天皇の人生の中で、一番心に残ったのは、岩倉具視との別れについてのエピソード。人間臭い、感動的な別れなんだけど、これ以降、どんどん身近な人達との別れや自らが表に立つことが多くなったように思えるので、人生の一つの山場だったのではないでしょうか。
by yamanochika | 2007-05-09 02:32 | その他読んだもの
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