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ドラゴンがいっぱい! アゴールニン家の相続奮闘記

ジョー・ウォルトン著。ハヤカワFT文庫刊。

500余歳の大往生を遂げたアゴールニン啖爵。遺産は父親の遺言の下、牧師として独立した長男、士爵夫人となった長女を除く3人の子供達で分け合うはずだった。しかし、娘婿のデヴラク士爵が分け合うのは宝だけだと、子供達を押しのけて亡き啖爵の遺骸を貪り喰ったことから相続騒動に発展。都で働いている次男のエイヴァンはデヴラクを訴える一方、下の二人の娘はそれぞれ兄と姉に引き取られて、様々な事件に巻き込まれる…。

ヴィクトリア朝の小説をそのまま生かそうとしたら主人公がドラゴンになってしまった、と作者が言うように、ドラゴンの国で起きる騒動がそのままヴィクトリア朝小説の世界で再現。ヴィクトリア朝の世界がこれほどドラゴンに合うとは思いませんでした。最初は、男性に求婚されると(あるいは無理矢理迫られると)乙女から花嫁ピンクに変色してしまうメスドラゴンに驚いたりしましたが、この変色が話の中で上手く使われているんですよね。

アゴールニン家の次女セレンドラとシャー珀爵夫人との会話には「高慢と偏見」の、エリザベスとダーシーの伯母さんの会話を思い出しました。独自の世界観の中に、ユーモアあふれるジェイン・オースティンの世界が広がっていて、なおかつこれ以上ない大団円に向かっていくという文句なしに楽しめる小説。ただ一つ文句があるとしたらこの話に続きがない所くらい。

ドラゴンの世界だけでなく、人間の世界でも親が亡くなった後の相続争いは何かとかしましい。この相続争いだけでも十二分に楽しめるのに、そこに色々なプロポーズやら告白が入り交じって、話が輻輳していく様は見事。
by yamanochika | 2008-04-29 01:12 | SF・FT
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