フロスト始末

R・D・ウィンクフィールド著 創元推理文庫刊。

フロスト警部シリーズ最終刊。
買ってから読み終わるのが勿体なくて1ヶ月位寝かせていたんだけど、読み始めたらあっという間に読み終わってしまった。

相変わらず他の署の応援に人員が割かれ人手不足なデントン署。そんな中で少女の連続強姦事件や、ローティーンの少女が行方不明になる事件が勃発。更にスーパーへの恐喝事件など次々に事件が起きる中、マレット署長がフロスト警部を追い払う為に他の署から呼び寄せたスキナー主任警部により、デントン署からの異動を余儀なくされたフロスト。事件捜査とフロストの運命や如何に。

今作では若かりし頃の妻と自分を思い出し涙ぐんだり、老いを感じるシーンも多くどことなく侘しさの漂うフロスト警部。
作中で同時進行に起きている事件が終盤に収束していく繋がりの上手さは健在ではあるものの、作中のキャラがエネルギッシュで、若さがあったフロスト日和などと比べるとエネルギー不足は否めない。
それでもなお、どれだけ泣き言を言っていても事件を解決するために駆け回るフロストの姿に滲み出る人間味がこのシリーズの最大の魅力であり、味わいだと思う。そしてもう1つの味である下品なユーモアも健在。
シリーズファンなら頭のてっぺんからつま先まで楽しめる作品になっている。



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# by yamanochika | 2017-08-14 22:10 | 海外ミステリ

書架の探偵

ジーン・ウルフ著 ハヤカワノベルズ

22世紀のアメリカが舞台のSFであり本格ミステリ。

図書館の書架に住まうE・A・スミス。ミステリ作家として活躍していた彼は、生前の彼の脳をスキャンし作家の記憶と感情を備えた複生体であり、図書館の蔵者として所蔵されている。
そのスミスの元へ、コレット・コールドブルックと名乗る若い女性が訪れる。彼女の父と兄が相次いで亡くなり、兄の死の直前にスミスの著書「火星の殺人」を渡された彼女はこの本に兄の不審死の謎が隠されているのではないかと考えたのだ。
スミスは彼女に借りだされ、推理小説家としての知識を用いながら彼女の兄の死の謎に迫っていくが

人間でありながら、人間ではなく物として扱われ生まれる前から機能の制限がされているという複生体の設定がなかなかエグい。エグいもののそこを前面には押し出さず、ミステリとしての謎解きが主体。
理論的に謎を解き明かしていくスミスの言動と、彼に課せられている制限や、複生体の置かれている状況、悲哀が上手く絡まっていて面白い。
続編が企画されているそうですが、ぜひ読んでみたい。


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# by yamanochika | 2017-07-30 19:18 | 海外ミステリ

エリザベス・ウェイン著 創元推理文庫刊

第二次大戦中のフランスでドイツ軍の捕虜となったイギリス人の特殊作戦執行部員の女性が、尋問を止める代わりにイギリス軍の情報を漏らすように強要される。彼女が書いた手記は何故か親友である女性飛行士マディの日々が小説のように綴られていた。

本書は二部構成になっており、第一部では捕虜となった女性の手記、第二部はその手記にどんな意味が隠されていたのかがわかる展開になっています。後書きその他で第一部には仕掛けがあると書かれている通り、第二部を読んでから第一部を読み返すと、彼女の頭の良さ、何を隠し、何を言おうと思っていたかが分りもう1度読み返したくなる。
捕虜となった彼女の身に起きたことは悲惨の一言に尽きてしまうんですが、彼女の手記の中ではマディとの友情、飛行士を目指すマディの物語が生き生きと語られており、戦争が無ければ出会わなかったかもしれない上流階級の女性クイーニーと小売店の孫娘マディの友情物語としても楽しめる。


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# by yamanochika | 2017-07-23 22:59 | 海外ミステリ

凍った夏

ジム・ケリー著 創元推理文庫刊

公営アパートで肘掛椅子に座ったまま凍死した男が発見された。自殺の可能性が高いとされたが取材のため訪れた新聞記者ドライデンは疑問を覚える。死んだ男は金に困っていたが、部屋のコイン式電気メーターには硬貨が補充されたばかりだった。自殺する人間がそんな行動を取るだろうか。やがて死んだ男が、今話題になっているカトリック教会の孤児院で起きていた児童虐待事件の証人の一人だったことが分かる。何か関連があるのか。調査を進めていくうちに、新たな謎が浮かび…。

ドライデンシリーズの4作目。大寒波が訪れた冬が舞台でありながら、物語の中核を占めるのは夏の話。事件の捜査を進めていくうちに、驚くべき事実が明らかになるのですが、単に殺人事件というよりも子供たちの未来が殺されてしまったのだと思うと切ない。大した問題が無かったと思うのは事件を起こした人間だけで、そのせいで将来も希望も失われた人たちがいるというのが大きなテーマで、だからこその邦題なのかと思う。ドライデンの妻、ローラの状態が回復するにつれ新たな問題が起こされてドライデンが更に追い詰められていくのもまた切ない。

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# by yamanochika | 2017-07-23 22:43 | 海外ミステリ

バルコニーの男

マイ・ジューヴァル/ペール・ヴァールー著 角川文庫刊

刑事マルティン・ベックシリーズの新訳版。シリーズ3冊目。

ストックホルム中央の公園で女児の遺体が発見された。さらに2日後に別の公園で新たな少女の遺体が発見されストックホルム市民にはパニックが広がる。事件の手掛かりは乏しく、3歳の男の子の証言と、強盗犯の記憶のみ。捜査は行き詰まりをみせるが…。

冒頭に、おそらく犯人と思われる人物の視点が入り、丹念に事件について語られていく。夏であり、元々発生していた連続強盗事件に加え、連続少女殺人事件がおこり警察の捜査は難航する。
この、事件について派手な展開があるわけではない、地道な捜査とそこから広がる突破口、決して円満とはいえない刑事たちのやり取りがたまらなく面白い。最後の犯人逮捕の場面。明確に書かれてはいないけれど、前後の事情を察するとぞっとするような怖さがある。この過剰さがないところがいいんだ。

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# by yamanochika | 2017-07-23 22:33 | 海外ミステリ

チャールズ・ボズウェル著 創元推理文庫刊。

若い女性が犠牲となった10の犯罪のノンフィクション。
ということで手に取ったんですが、取り上げられている事件はかなり古いものが多い。というのも刊行されたのが1949年だから。ノンフィクションということで、一歩引いたところから被害者と事件の様相、捜査について淡々と事実を積み重ねる形で描写されていて読みやすい。
有名な事件から無名な事件までさまざまですが、有名どころにはこのノンフィクションを元に小説化されたものもあり、作家の作風にもかなりの影響を与えているのではないか。


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# by yamanochika | 2017-07-23 22:20 | 海外ミステリ

マイルズの旅路

ロイス・マクマスター・ビジョルド著 創元推理文庫刊

皇帝の命で「キボウダイニ」という惑星の人体冷凍会社協会主催の会議に出席したところ、反乱分子らしき連中に拉致されたマイルズ。なんとか逃れたものの、薬物のアレルギーのため意識朦朧とし地下の冷凍保存施設をさまよっていたところを偶然出会った少年ジンに助けられる。

マイルズシリーズの最終巻。以前はこの後の話もあったような気がしましたが、日本では一区切りというところなんでしょうか。確かに若者だったマイルズも、今ではあのころのような冒険が出来る年齢でも無くなってしまったので、まあ仕方がないのかな。

死亡した人間を冷凍保存し再生させるという技術は過去にも語られ、実際にマイルズにも使用されていますが、この再生技術が国をあげた事業になっている惑星が舞台。正確には再生される前の、「冷凍保存」が売り物ですが、「死者の国」と「死者の権利」が大きな幅を聞かせていて少し怖い。色々と複雑な事情をマイルズが解き明かし、自分を救ってくれたジンと彼の家族を助けるという話になるんですが、話の主眼となるのはやはり最後の家族の出来ごとだと思うんですね。例えその技術が自分に適用できて、延命出来たとしても彼はその道を選ばなかったと思うんですが、家族にとっては出来る限り長生きして欲しいと思うし、なかなか難しい。


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# by yamanochika | 2017-07-23 22:08 | SF・FT

カイ・マイヤー著 創元推理文庫刊


アラビアンナイトの世界を舞台にした「嵐の王」3部作。
実際の歴史とは少し異なる、魔法が存在する世界。20年前に突如現れた魔人によって世界は分断され、サマルカンドの街は高い城壁によってかろうじて魔人から護られているものの外の世界との交易は禁止されている。
魔人の住む砂漠を魔法の絨毯を使って乗り越えバグダッドとの密輸貿易をおこなう密輸商人だったターリクは、今は同じく禁止されている絨毯乗りとしてレースに参加し、金を稼ぐ毎日を送っている。ある日、謎めいた美女サバテアにバグダッド行きを持ちかけられ断ったものの、弟のジュニスが彼女の口車に乗ってバグダッドへ向かった事を知り、彼らの後を追って砂漠へと旅立つ…。

魔法で作られた不思議な木馬が空を飛び、空中を絨毯乗りが飛び交う世界。世界の色は極彩色の魔法で彩られているのにどこか閉塞感があり、住んでいる人々も苦しんでいる。この閉塞感がどこから出てくるものなのかという謎が解き明かされた時に、あっとなった。謎が一つ解けるたびに新しい謎が生まれ、世界は広がっていくのに最後に辿り着くのは箱庭のような世界であるという。ターリク、サバテアなどの登場人物たちも魅力だけれど、この世界観が素晴らしいと思う。

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# by yamanochika | 2017-07-23 21:57 | SF・FT

バリー・ライガ著 創元推理文庫刊

シリアル・キラーを父に持ち、父によって英才教育を受け、いつか自分も父のような人間になってしまうのではないかと恐れながら生きていたジャズ。第1部は逮捕され刑務所に収容されていた父が脱獄したところで幕を閉じる。
第2部はその2ヶ月後、NY市の刑事がジャズの元を訪れNYで起きている連続殺人の捜査協力を依頼するところからスタートする。第2部、第3部は話が一繋がりになっており、新たな謎と事件を巻き起こしながらスピーディに進んでいく。父親がシリアル・キラーであるというのが新しいけれど、基本的には両親からの自立と成長を描いた作品。ソシオパスが神格化されているのが気になるものの、少年の成長ものとしては楽しい。


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# by yamanochika | 2017-07-23 21:40 | 海外ミステリ

マージェリー・アリンガム著 創元推理文庫刊

日本独自編集の短編集

2作目の短編集はピリッとした正統派のミステリが多め。犯罪の種類としては詐欺事件の解決が主ですが、キャンピオン氏の人柄が光っている。一番ピリッとした味を感じたのは「面子の問題」ですが。
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# by yamanochika | 2017-07-16 10:44 | 海外ミステリ

日々読んだ本の記録。他映画、漫画等の感想などあれこれ。感想はネタバレありです。ご注意下さい。
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