カテゴリ:海外ミステリ( 567 )

フロスト始末

R・D・ウィンクフィールド著 創元推理文庫刊。

フロスト警部シリーズ最終刊。
買ってから読み終わるのが勿体なくて1ヶ月位寝かせていたんだけど、読み始めたらあっという間に読み終わってしまった。

相変わらず他の署の応援に人員が割かれ人手不足なデントン署。そんな中で少女の連続強姦事件や、ローティーンの少女が行方不明になる事件が勃発。更にスーパーへの恐喝事件など次々に事件が起きる中、マレット署長がフロスト警部を追い払う為に他の署から呼び寄せたスキナー主任警部により、デントン署からの異動を余儀なくされたフロスト。事件捜査とフロストの運命や如何に。

今作では若かりし頃の妻と自分を思い出し涙ぐんだり、老いを感じるシーンも多くどことなく侘しさの漂うフロスト警部。
作中で同時進行に起きている事件が終盤に収束していく繋がりの上手さは健在ではあるものの、作中のキャラがエネルギッシュで、若さがあったフロスト日和などと比べるとエネルギー不足は否めない。
それでもなお、どれだけ泣き言を言っていても事件を解決するために駆け回るフロストの姿に滲み出る人間味がこのシリーズの最大の魅力であり、味わいだと思う。そしてもう1つの味である下品なユーモアも健在。
シリーズファンなら頭のてっぺんからつま先まで楽しめる作品になっている。



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by yamanochika | 2017-08-14 22:10 | 海外ミステリ

書架の探偵

ジーン・ウルフ著 ハヤカワノベルズ

22世紀のアメリカが舞台のSFであり本格ミステリ。

図書館の書架に住まうE・A・スミス。ミステリ作家として活躍していた彼は、生前の彼の脳をスキャンし作家の記憶と感情を備えた複生体であり、図書館の蔵者として所蔵されている。
そのスミスの元へ、コレット・コールドブルックと名乗る若い女性が訪れる。彼女の父と兄が相次いで亡くなり、兄の死の直前にスミスの著書「火星の殺人」を渡された彼女はこの本に兄の不審死の謎が隠されているのではないかと考えたのだ。
スミスは彼女に借りだされ、推理小説家としての知識を用いながら彼女の兄の死の謎に迫っていくが

人間でありながら、人間ではなく物として扱われ生まれる前から機能の制限がされているという複生体の設定がなかなかエグい。エグいもののそこを前面には押し出さず、ミステリとしての謎解きが主体。
理論的に謎を解き明かしていくスミスの言動と、彼に課せられている制限や、複生体の置かれている状況、悲哀が上手く絡まっていて面白い。
続編が企画されているそうですが、ぜひ読んでみたい。


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by yamanochika | 2017-07-30 19:18 | 海外ミステリ

エリザベス・ウェイン著 創元推理文庫刊

第二次大戦中のフランスでドイツ軍の捕虜となったイギリス人の特殊作戦執行部員の女性が、尋問を止める代わりにイギリス軍の情報を漏らすように強要される。彼女が書いた手記は何故か親友である女性飛行士マディの日々が小説のように綴られていた。

本書は二部構成になっており、第一部では捕虜となった女性の手記、第二部はその手記にどんな意味が隠されていたのかがわかる展開になっています。後書きその他で第一部には仕掛けがあると書かれている通り、第二部を読んでから第一部を読み返すと、彼女の頭の良さ、何を隠し、何を言おうと思っていたかが分りもう1度読み返したくなる。
捕虜となった彼女の身に起きたことは悲惨の一言に尽きてしまうんですが、彼女の手記の中ではマディとの友情、飛行士を目指すマディの物語が生き生きと語られており、戦争が無ければ出会わなかったかもしれない上流階級の女性クイーニーと小売店の孫娘マディの友情物語としても楽しめる。


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by yamanochika | 2017-07-23 22:59 | 海外ミステリ

凍った夏

ジム・ケリー著 創元推理文庫刊

公営アパートで肘掛椅子に座ったまま凍死した男が発見された。自殺の可能性が高いとされたが取材のため訪れた新聞記者ドライデンは疑問を覚える。死んだ男は金に困っていたが、部屋のコイン式電気メーターには硬貨が補充されたばかりだった。自殺する人間がそんな行動を取るだろうか。やがて死んだ男が、今話題になっているカトリック教会の孤児院で起きていた児童虐待事件の証人の一人だったことが分かる。何か関連があるのか。調査を進めていくうちに、新たな謎が浮かび…。

ドライデンシリーズの4作目。大寒波が訪れた冬が舞台でありながら、物語の中核を占めるのは夏の話。事件の捜査を進めていくうちに、驚くべき事実が明らかになるのですが、単に殺人事件というよりも子供たちの未来が殺されてしまったのだと思うと切ない。大した問題が無かったと思うのは事件を起こした人間だけで、そのせいで将来も希望も失われた人たちがいるというのが大きなテーマで、だからこその邦題なのかと思う。ドライデンの妻、ローラの状態が回復するにつれ新たな問題が起こされてドライデンが更に追い詰められていくのもまた切ない。

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by yamanochika | 2017-07-23 22:43 | 海外ミステリ

バルコニーの男

マイ・ジューヴァル/ペール・ヴァールー著 角川文庫刊

刑事マルティン・ベックシリーズの新訳版。シリーズ3冊目。

ストックホルム中央の公園で女児の遺体が発見された。さらに2日後に別の公園で新たな少女の遺体が発見されストックホルム市民にはパニックが広がる。事件の手掛かりは乏しく、3歳の男の子の証言と、強盗犯の記憶のみ。捜査は行き詰まりをみせるが…。

冒頭に、おそらく犯人と思われる人物の視点が入り、丹念に事件について語られていく。夏であり、元々発生していた連続強盗事件に加え、連続少女殺人事件がおこり警察の捜査は難航する。
この、事件について派手な展開があるわけではない、地道な捜査とそこから広がる突破口、決して円満とはいえない刑事たちのやり取りがたまらなく面白い。最後の犯人逮捕の場面。明確に書かれてはいないけれど、前後の事情を察するとぞっとするような怖さがある。この過剰さがないところがいいんだ。

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by yamanochika | 2017-07-23 22:33 | 海外ミステリ

チャールズ・ボズウェル著 創元推理文庫刊。

若い女性が犠牲となった10の犯罪のノンフィクション。
ということで手に取ったんですが、取り上げられている事件はかなり古いものが多い。というのも刊行されたのが1949年だから。ノンフィクションということで、一歩引いたところから被害者と事件の様相、捜査について淡々と事実を積み重ねる形で描写されていて読みやすい。
有名な事件から無名な事件までさまざまですが、有名どころにはこのノンフィクションを元に小説化されたものもあり、作家の作風にもかなりの影響を与えているのではないか。


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by yamanochika | 2017-07-23 22:20 | 海外ミステリ

バリー・ライガ著 創元推理文庫刊

シリアル・キラーを父に持ち、父によって英才教育を受け、いつか自分も父のような人間になってしまうのではないかと恐れながら生きていたジャズ。第1部は逮捕され刑務所に収容されていた父が脱獄したところで幕を閉じる。
第2部はその2ヶ月後、NY市の刑事がジャズの元を訪れNYで起きている連続殺人の捜査協力を依頼するところからスタートする。第2部、第3部は話が一繋がりになっており、新たな謎と事件を巻き起こしながらスピーディに進んでいく。父親がシリアル・キラーであるというのが新しいけれど、基本的には両親からの自立と成長を描いた作品。ソシオパスが神格化されているのが気になるものの、少年の成長ものとしては楽しい。


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by yamanochika | 2017-07-23 21:40 | 海外ミステリ

マージェリー・アリンガム著 創元推理文庫刊

日本独自編集の短編集

2作目の短編集はピリッとした正統派のミステリが多め。犯罪の種類としては詐欺事件の解決が主ですが、キャンピオン氏の人柄が光っている。一番ピリッとした味を感じたのは「面子の問題」ですが。
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by yamanochika | 2017-07-16 10:44 | 海外ミステリ

ゴッサムの神々

リンジー・フェイ著 創元推理文庫刊

1845年、火事が原因で顔に火傷を負い職を失ったティムはNYに初めて出来た市警の警官となる。ある夜血まみれの少女とぶつかったティム。彼女の言葉通りに切り刻まれた少年の遺体がみつかり…

ニューヨークに初めて出来た市警について実際の人物を交えながら語られていく警察小説。導入部は話に入りにくいものの、事件が転がり始めてからは面白く読めた。
元バーテンダーのティムは人間観察能力が優れており、事件の推理にもそれが役に立つ。兄であるヴァルとの少し拗れた兄弟関係も味になっている。
時代背景を考えると事件の解決のつけ方にも納得。オチかと思った後ろに更に2段オチがありなかなか楽しめた。
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by yamanochika | 2017-07-16 10:33 | 海外ミステリ

地中の記憶

ローリー・ロイ著 ハヤカワミステリ刊

15歳と半年を迎える成女の日、真夜中に井戸の底を見ると未来の夫が映るという。成女になったアニーは隣家のベイン家の庭に忍び込むが、井戸には顔は映らず畑で死体を見つけてしまう。

1950年代の南部を舞台に、風習の色濃く残る町で暮らすアニーと、1936年のサラの2つの視点で物語は進んでいく。

アニーにはジュナ叔母さんという語るに憚られる事をした叔母がおり、サラにはジュナという妹がいる。
両者を繋ぐジュナは何をしたのか。半ば町の伝説になっているジュナの話と、現在のアニー達に降りかかる出来事は関連があるのか。

全体的に湿った匂いが漂う。早い段階でアニーの実の母親はジュナであり、ジュナのせいで誰かが縛り首にされた事がわかる。奔放で魔性の女だったジュナ。彼女はどうなったのか、本当は何が起きたのかが話の焦点になるんですが、基本は少女の成長の物語。実の母親と育ての母と、どちらが本当の親なのか、という物語でもあります。
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by yamanochika | 2017-07-09 12:58 | 海外ミステリ

日々読んだ本の記録。他映画、漫画等の感想などあれこれ。感想はネタバレありです。ご注意下さい。
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