カテゴリ:SF・FT( 172 )

S・E・グローヴ著 ハヤカワ文庫刊

大崩壊により様々な時代や魔法に飲み込まれバラバラになった世界。新西洋ボストンに住む少女ソフィアは、陰謀に巻き込まれ誘拐された著名なマップメイカーである伯父シャドラックの行方をおって旅立つ。手掛かりになるのは伯父の残したガラスの地図のみ。友人セオと共に汽車に乗り込んだソフィアもまた敵に狙われて…

ヤングアダルト向けのファンタジー。混乱に満ちた世界を旅するのには地図が必須。優れた地図を作れるマップメイカーは魔法のような力を持つとも言われている。自らもマップメイカーの卵であるソフィアが、唯一残された身内である伯父や友人を救うために必死に頑張る姿が愛らしい。
作中に出て来るラクリマや謎と示唆に富んだ物語は作中できちんと伏線が解き明かされてていくし、スッキリ読める。敵と言いつつも、複雑な人物の悲哀が伝わってくるのもいい。
作品を通しての謎になるソフィアの両親はどこにいるのか、セオの出生は明かされるのかなど明かされていない事もあるし何より大崩壊は何故起きたのかがきになる。
続編の翻訳を期待したい。


[PR]
by yamanochika | 2016-06-25 12:02 | SF・FT

失われしものたちの本

ジョン・コナリー著 東京創元社刊

失われしもの、というのは誰にとって失われたものなのだろうか。

第二次大戦直前のイギリス。愛する母を病気で失った12歳の少年デイヴィット。たった2人の家族として父親とふれあったのもつかの間、父は母の入院していた病院の理事である女性と子供を作り、再婚してしまう。新しい家族と一緒に、古い屋敷に住むことになったデイヴィットは、死んだ母の声に導かれるようにして別の世界へ旅立つ。そこはよく知るおとぎ話が姿を変えて実在している世界だった。オオカミの子を産んだ赤ずきん、白雪姫に虐待される7人の小人。老いた国王が持つ「失われしものたちの本」があれば元の世界に戻れるかもしれない。デイヴィットは国王が住む王都を目指して旅立つが、行く手には苦難が待ち受けていた。

思春期の入口にたった子供、大切なものを失った子供が異世界を旅する内にその身に抱える人を殺せるほどの怒りを解放させ成長していく。そうまとめると成長譚としてはよくある話になってしまうけれど、この世界を彩る姿を変えたおとぎ話は怪しくも魅力的で、狼人間に追われる恐怖と相まって幻想的な雰囲気を醸し出す。母の幻影を追うことを辞め、理想的な父と別れたあと、デイヴィットは自分の目で現実を見られるようになっていく。そうして現実世界に戻った少年が、これから大人として成長していくなら希望に満ちて終わるのだけれど、この話は着地点がそこではない。その先に着地点が作られているのが、ほろ苦い後味を残しているのだと思うのです。
[PR]
by yamanochika | 2016-02-19 02:11 | SF・FT

大尉の盟約

L・M・ビジョルド著。創元推理文庫刊

イワン、偽装結婚する。

あらすじはその一語に尽きるんですが、マイルズ・シリーズにおいて常に愛すべき愚か者として書かれていたイワンの嫁取り話。シリーズとしては番外編になるので割合気楽に読めるんですが、どたばたっぷりではシリーズでもなかなかの作品。

コマールで軍務についていたイワンは機密保安庁の職員に頼まれてある女性と親密になろうとする。彼女が追われていることを知ったイワンは彼女の窮地を救うために偽装結婚を提案する。バラヤーに戻ったらすぐ離婚するつもりの結婚だったがバラヤーに戻るより早くイワンの母レディ・アリスの知るところとなり…。

結婚してみたら案外相性が良くて、お互いに相手に惹かれあっていく二人の話なので、結婚から始まる恋愛小説と言っても過言ではないかも。シリーズ作品を読んでいればイワンやマイルズをはじめとするヴォルコシガン一族の複雑な血縁関係もおなじみですが、ごく中流のヴォル階級の若者に見えたイワンの実情が分かったテユのとまどいがなかなか新鮮。
テユの方にも色々な事情があって、そこが話のキモにもなるわけですが、やはり圧巻は最後のアレの崩壊。バラヤーの旧世代の象徴ともいえる場所なので、一つの時代が終わったような感慨がありますね。
[PR]
by yamanochika | 2016-02-14 00:31 | SF・FT

ドクター・スリープ

スティーブン・キング著 文藝春刊

シャイニングの続編
かがやきを持つ子供ダンはあの後どう生きていったのか。
オーバールックから生き延びた親子の物語とやがてダンがかがやきのもたらすものから逃れる為に酒に溺れるようになったことと、どん底からの立ち直りとが冒頭で語られていく。

ホスピスに勤めるようになった自らの力を生かし死にゆく人々が安らかに眠れるように末期に寄り添い、ドクター・スリープと呼ばれるようになる。やがて物事はすべて循環していくという言葉通りに、かつての自分より大きなかがやきを持った少女アブラの師匠として、彼女の持つ生命力を狙う空っぽの悪魔たちと戦う事に…

シャイニングと言えばキングの長編の中でも屈指のホラー作品として有名です。確かに閉ざされた場所での幽霊屋敷ものとしての恐怖と閉塞感は群を抜いていますが、何より印象に残るのは父親の息子への強い愛情。徐々に狂気に襲われ愛する息子を自らの手で殺してしまいそうになる事の恐怖。家族の物語であり、悲しい話だというのが読後の感想でした。

そしてその家族の物語としてドクター・スリープはシャイニングをしっかり引き継いだ物語になっていると思う。すべての物事は循環し、元に戻っていく。ダンの物語の総決算を迎えるのがあの場所になるのも、幕切れとして相応しい。そしてダンとアブラを助ける最後の一助となるのが彼だというのがすごく嬉しかった。親子の物語にようやくピリオドがうたれた。そんな感じです。

登場人物では最初にダンに救いの手を差し伸べるビリーと、アブラの曽祖母コンチェッタが印象に残ってます。少し不満点が残るとしたら敵でありアブラを狙う連中がショボいところか。
[PR]
by yamanochika | 2015-08-01 14:43 | SF・FT



ゲイル・キャリガー著 ハヤカワ文庫刊

ソフロニアの友人シドヒークの元に、家族の一大事を告げる手紙が届く。シドヒークの動揺を気にしながらも兄の結婚披露の為の仮面舞踏会に赴くソフロニアと親友のディミティ。しかし舞踏会の会場では驚くべき出来事が待っていた。謎の解明と、シドヒークからの助けの求めに応じてスコットランドへ向かうソフロニアだったが…。

頭が良くてお転婆な少女による冒険活劇第3弾。ソフロニアが年頃に近づくにつれ、恋愛要素も強まって、恋愛への憧れと自分の身分や相手の立場に揺れ動いたり、スパイとしての教育を卒業した後の進路について思い悩んだり。そこに遂にキングエア団の反乱と、マコン卿のキングエア団離脱が起こります。アレクシア嬢でも語られていたけれど、なるほどこういう経緯でシドヒークとナイオール大尉が結ばれる事になったのかと感慨深い。ソフロニアの身近から友人たちが一人、一人自分の進路を決めて旅立っていくんだけど、最終巻ではディミティとの別れが描かれるんだろうなあ。

ソフロニアにも自分の進路について決断しなくてはいけない出来ごとが起きるんですが、最終巻でまたこれが覆されるのか?アレクシア嬢の時間軸ではピクルマンの望むような世界にはなっていないので、ピクルマンの陰謀がどのように阻止されるのか、次の話が楽しみです。
[PR]
by yamanochika | 2015-06-01 01:26 | SF・FT

魔使いの復讐

ジョゼフ・ディレイニー著 東京創元社刊

魔使いシリーズの最終巻。表紙はグレゴリー爺さん。

大団円とはいかなかったけど、魔使いであるジョン・グレゴリーと、その弟子トムが子供から青年にまで成長した物語としては綺麗に幕が下りていたと思います。グレゴリー爺さんが弱っていくにつれ、トムが成長して魔使いとしての仕事をこなしていくようになる。世代交代や、師匠を乗り越えて大人になっていく過程が寂しいけど良かった。今回のエピソードでは、村の男に呼び出されて魔女と告発された女性と対面する話が一番好きです。こういう村のもめごとの解決も魔使いの仕事の一つで、本当か、本当でないかの見極めが大切だと言うところが。ここのところずっと、魔王や恐ろしい敵との戦いが多かったけど、こういう日常に根差した話の方ももっと見たかったな。

大団円といかないというのは最終巻になって敵の焦点がぶれたというか、新しい敵が現れて魔王との戦いの結着が話の盛り上がりでは無くなってしまったからなんですが、最後にきていきなりアリスがああいう風になるとは!ここまで時間をかけてアリスとトムの友情とそれが発展していく所見守ってきたので、新シリーズの構想の為とはいえアリスの行動にもやもやしてしまう。それが大人になるということなのかもしれませんが、このシリーズはこのシリーズでスッキリまとめて欲しかったなあ。

それでも、ジョン・グレゴリーが魔女に呪われたような結末を辿ることなく、彼の生に見合った最後を迎える事が出来て良かったです。そして最終巻になってもグリマルキンはやっぱりかっこよかった。
既に新シリーズも出版されているそうですが、今回モヤモヤを抱えながら終わってしまったので、新シリーズも読んでみたい。
[PR]
by yamanochika | 2015-05-09 17:01 | SF・FT

ジョゼフ・ディレイニー著 東京創元社刊

魔使いシリーズの最終巻前に出た本編スピンオフ。扱いとしてはほぼ本編になるのかな?

魔王を倒す最後の鍵となる剣を求めて、闇の国にやってきたアリス。アリスの過去と新事実、それに新たな謎というか敵が出てきてなかなか緊迫感がありましたが、一番印象に残ったのはグリマルキンの弟子で死亡した後闇の世界の住人となったソーン。もう今更救いがないといえば救いがないんだけど、強く生きて行って欲しいな。

あと、今回解説が挿絵を担当されている佐竹さんでしたが、本文の中の挿絵の使い方が印象的でした。内容と合わせた挿絵というか、挿絵に合わせて本文のレイアウトを変えていると言う方が正しいのかな。なかなか上手な使い方なので、ファンタジーならこういう装丁がが増えたら面白そう。
[PR]
by yamanochika | 2015-05-09 16:46 | SF・FT

ディアスと月の誓約

乾石智子著 ハヤカワ文庫刊

伝説の獣サルヴィの角によって支えられた王国<緑の凍土>。角が砕け散るたびに王はサルヴィを狩って新しい角を手に入れなくてはならず、サルヴィの角を手に入れる事が王国継承の条件とされる。王国の第三王子ディアスは異母兄オブンの姦計により国を追われる身となるが、夢に出てくるサルヴィ発祥の地を求め旅立つ…。

伝説によって生かされている国と厳しい環境をたくましく生き抜いている人々。幻想的でありながら地に足がついた感じがするのは、後者の人々の生活が描かれているからでしょうか。ディアスは旅によって成長していくのですが、本当の意味で彼を助けているのは、彼がナナニに示した思いやりと人間としての絆であり、そういう意味ではディアスは旅に出る前からある程度成熟した人間として描かれています。彼の旅と同時に、彼と濃い関係を持つ姪のアンローサの逃避行が描かれ、成長譚としてはアンローサの旅の方が比重が高い。

アンローサの旅、ディアスの旅、そして王国の選択が一つにまとまる時に、救いが訪れる。出来ればナナニと彼らが再会することを願ってやみません。
[PR]
by yamanochika | 2015-03-31 19:27 | SF・FT

22/11/63

スティーブン・キング著 

タイトルから分かる通り、アメリカを震撼させたケネディ大統領暗殺事件を巡るタイムトラベルもの。
「もし彼が生きていたら…」という話や陰謀論は色々みたのでこの手の改変ものはちょっと食傷気味だったんですが、主軸となるのは主人公である高校教師ジェイクが過去の時代で人生をやり直し恋愛する話。1958年に通じる「ウサギ穴」を知った主人公ジェイクが、彼の前にその扉を通って過去を改変しようとした友人の頼みで、58年に旅立つ。そしてそこで63年までの5年間を過ごす間に、人生を(ある意味で)やり直すというのが話の主題。

ジェイクが過去で過ごす時間は彼の身の上に実際に流れる時間なので、現代に戻った時には過去で過ごした年月がジェイクの身の上に流れている。だから何度も過去に戻る事は出来ないし、当然過去に戻って歴史を変えようとすることに抵抗する歴史の流れがあるので、まるで悪夢の中を動いているかのような出来ごとが彼に降りかかってくる。その中でジェイクが過ごした人生にものすごく重みが出てくるので、最後の彼の葛藤や苦悩が伝わってくるんですよね。

SFとしての側面もあるけれど、恋愛ものとして直球で響いてきた作品。あの事件が起きた当時のデリーが作中に出てきたのも懐かしかった。ITの世界とこの世界は繋がっているんだなあ。
[PR]
by yamanochika | 2014-09-27 13:02 | SF・FT

魔使いの血

ジョゼフ・ディレイニー

本国では遂にあと2作で完結したそうで、この巻もクライマックス間近。いよいよ魔王の倒し方についてトムが知ることになります。最大の成果を得る為には最大の犠牲が必要になるということで、魔王を倒すことはトムにとっても大きな痛みが伴うわけですが、最終的にどうなるのか。常に冒頭で語られている丘の謎が何かのヒントになってそうなんだけど、どうなんだろう。

トムが強くなっていくにつれ、師匠のグレゴリーは年老いて弱っていく。当たり前の事なんですが、登場した時の怖いけど頼りになるグレゴリー爺さんを知っているとやはり寂しい。

しかしアリスといいグリマルキンといい女性陣の強さが際立つなあ。特にグリマルキンはすごくかっこいい。最終巻まで死なないで出てきて欲しい。
[PR]
by yamanochika | 2014-07-09 23:01 | SF・FT

日々読んだ本の記録。他映画、漫画等の感想などあれこれ。感想はネタバレありです。ご注意下さい。
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31