カテゴリ:国内作家( 71 )

王とサーカス

王とサーカス

米澤穂信著 東京創元社刊

新聞社を辞めてフリーのジャーナリストとなった太刀洗万智は、取材のため訪れたネパールで国王一族の殺害事件に遭遇する。

2001年にネパールで起きた王族殺害事件を背景に、ジャーナリストとして何を書くのか、なぜ書くのかを問いかけた作品。作中で起きた別の殺人事件の真相を主人公が突き止める描写はあるものの、作品の主題はジャーナリズムとは何か。記事にする為に取材対象をサーカスのような見世物として扱って良いのか、といった所に行き着く。
後味の良い作品では無いけれど、何かは残る話だった。

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by yamanochika | 2017-11-05 06:35 | 国内作家

どぶとろ

半村良著 廣済堂文庫

本所で夜鷹蕎麦屋の老人が殺された。銀座の岩瀬家に仕える若者平吉は、主人がこの事件に関わっているのではないかと事件の背景を探っていくが。

初めに幾つかの短編があって最後に一つの長編として繋がっていく。短編を読んだときは人情物として読んでいたが長編で明かされる背景や結末はなかなか苦い。短編での登場人物に愛着があると尚更。平吉が選んだ未来はこれで良かったのか、何が彼の幸せだったのか考えてしまう。
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by yamanochika | 2017-01-21 16:59 | 国内作家

僕らの世界が終わる頃

彩坂美月著 新潮社刊

中1の頃のある出来事が理由で引きこもりになった少年渉。彼がネットで書き始めた小説が評判を呼ぶと同時に渉の家の近所で小説で書かれた事件が実際に起きる。誰かが渉の小説を模倣しているのか?やがて渉の身にも危険が迫り…。

ネット小説を模倣したかのような事件が起こり…という内容からはサイコものを連想させるけど、一番焦点が当たっているのは少年の成長と、心の絆の癒し。ある意味事件自体は周辺で起きた出来事であって、それにどう向き合うかが本題なんですね。
彼の心の叫びがそのまま現されたような作中の小説。結末がああいう風に閉じられたことが彼の心の健全さ、強さを表しているように思います。
爽やかでキュンとくる青春小説。
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by yamanochika | 2016-06-12 10:08 | 国内作家

柘榴パズル

彩坂美月著 文藝春秋刊

祖父と母親、大学生の兄に年の離れた妹、そして短大生の私。滅多にいないような仲の良い家族5人の一夏の出来事と日常の謎を描いた5連作。

家族の物語と強調されること、そして合間に挟まれる新聞記事が家族の崩壊を予感させて、彼らの仲の良さを見たりや小さな謎が解き明かされていくたびに緊張感が募っていく。
最後の章で全ての謎が明かされると兄と妹の間にある不思議な空気感が何故なのか分かってスッキリした。侘しさはあるもののドロドロした生臭さはない。綺麗な童話を眺めているような印象の話。
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by yamanochika | 2016-06-12 09:54 | 国内作家

ハンニバル戦争

佐藤賢一著 中央公論社刊

ハンニバル戦争こと第二次ポエニ戦争を、ハンニバルと対決するスキピオ・アフリカヌスを主人公に据えて書いた小説。ハンニバル戦争と銘打ちながら、話はあくまで若スキピオの視点から進む。ハンニバルとの戦争に初陣した血気盛んな若きスキピオはやがてハンニバルの強さに徹底的に打ちのめされる。何度やっても、これなら勝てるという戦いに望んでも勝てない。
スキピオ視点のハンニバルは、ローマ人から見たハンニバルと言っても過言ではない。ハンニバルの望みは何か。彼は何を考えて行動しているのか。それが分らないからこそ、ハンニバルの際立った天才性とローマ人がどれだけ彼を恐れたかが伝わってくる。正体のわからないものはそれだけで恐怖の源なので。

スキピオもまた若き天才と言われた存在なんですが、この小説でのスキピオはひたすらハンニバルへの劣等感に苦しむ。戦争に勝つことには成功したけれど、結局ローマはハンニバルに勝つことができなかった。ローマ人が何故あれほどカルタゴを恐れ、民族ごと滅ぼすようなことをしたのかという理由はそこに集約されているように思う。戦記ものとして読むと薄いなあという感想なんですが、ハンニバルという天才を外から眺める話とローマの今後の方向性が彼によって定まったと思って読むとそれなりに面白い。
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by yamanochika | 2016-02-19 02:29 | 国内作家

荒神

宮部みゆき著 朝日新聞出版社

時代小説というよりは伝奇ものになるのかな

元禄の頃、山深い小藩に突如として現れた化け物。山を開いて住む人々を貪欲に飲み込む生き物によって村が一つ壊滅し、化け物を退治するために集う人々の様々な思惑が交錯していく…。

基本は化け物退治の話なんですが、元は一つだった隣藩との確執が化け物を巡る人々の視点から語られていきこの百年の藩の因縁が紐解かれていくという感じの内容です。

簑助と爺さんが爽やかな風をもたらす一方藩の上層部が行ったと思われる幕府との取引は生々しい。朱音様が兄を恐れる理由はこういう事かなと思ってた通りでしたが、弾正は満を持しての登場だったので双子のやり取りが少ないのが少し物足りなかったかな。

登場人物たちに今後が気になる人達がいるけどもっと彼等が見てみたいと思うくらいの所で終わってしまうのがちょうどいいゆでしょうね。
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by yamanochika | 2015-05-23 09:53 | 国内作家

米澤穂信著 創元推理文庫刊

2年の夏に互恵関係を解除した小鳩くんと小佐内さん。

彼女が出来ても、相変わらず謎があればときほぐさずにいられない小鳩くん。一方新聞部が取材を始めた連続放火事件には小佐内さんの影が?

2人の道が分かれてどうなるのかと思いきや、人はそう変わるものでは無いのだなと思わされた3作目。もう一人の語り手は最後にこうなるからかと納得。多分本人視点以外だったら鼻持ちならない人物に描かれていたはず。小鳩くんも割合酷いけど、小佐内さんには恐怖するばかり。そんな理由で復讐されたらたまらんわ。
堂島部長、色々な事に目を配っていて後輩から慕われているのもよくわかる。
まだ後1冊はシリーズが予定されているそうなんですが、どう纏めるんだろう。
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by yamanochika | 2015-03-28 14:03 | 国内作家

米澤穂信著 創元推理文庫刊

小市民シリーズ

小市民を目指す小鳩くんと小佐内さん。互恵関係にある2人は目立たないように生きていくはずがついつい謎に首を突っ込む事に。

春に比べると事件の危険度もグレードアップ。日常の謎といえば言えるけど、冷静に考えるとかなり危うい。小鳩くんが小賢しい狐なら小佐内さんは狼。中学時代に何をやらかしたのか、一番知りたい謎なんだけど、明かされることはないんだろうな。スイーツ巡りをしていたかと思ったらいきなりおおごとになってびっくり。しかし堂島くんを見てるとホッとします。
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by yamanochika | 2015-03-28 13:56 | 国内作家

いっぴきの虫

高峰秀子著 文春文庫刊

著名人との対話を軸に綴られたエッセイ。有名な女優さんだけど、エッセイでも有名なんだっけと軽い気持ちで手に取ってみたんだけど、率直な語り口調が読み易く、面白い。

頭の良い、気の強い方だったんだろうなと言うのがエッセイからも伝わっくるんですが、同時に飾りのないまっすぐな人柄に惹きつけられるひとも多かったのだろうと思う。
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by yamanochika | 2015-03-14 12:10 | 国内作家

宮部みゆき著 新潮社刊

ついに生徒たちによる裁判が始まる。

最終巻まで来て法廷で一気に話が進んでいく。同じ人の証言から別の印象が齎されたり、その辺は本当の裁判みたい。最初は自殺と思われていたものが「事件」化され、もやもやを言葉にする事で昇華されていく過程を見ているようでした。最終巻で一番感心したのは、最初はモブのようだった陪審員達や廷吏をい努める山崎くんの個性が出てきて、彼らが活躍することによって更に話が面白くなっていったこと。

特に処理が上手いなと思ったのは三宅樹理。ある意味彼女は作中のダークヒーローのようなものだっただけに、彼女の成長と救済が本書の見処でもあります。真相は一人の人物の視点からの話になるのでそれが本当かどうかは実は分からないままなのだけれど、判決文はそれが一番収まりのいい置き場所であったように思う。ミステリというよりも、中学生の青春小説というのが正しいのかもしれない。
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by yamanochika | 2014-09-27 13:45 | 国内作家

日々読んだ本の記録。他映画、漫画等の感想などあれこれ。感想はネタバレありです。ご注意下さい。
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