カテゴリ:その他読んだもの( 43 )

領主館の花嫁たち

クリスチアナ・ブランド著 東京創元社刊

ブランドの遺作となったゴシック小説。

1840年、若妻を失って悲しみに沈む当主と領主館に、深い傷を負った若い家庭教師がやってくる。テティと呼ばれる彼女は、瓜二つの幼い双子の姉妹によって癒されていくが、領主館に住むヒルボーン一族に代々伝わる呪いが彼女たちを蝕んでいく。

幼い娘がいるやもめの若い郷士と家庭教師の組み合わせは同年代に書かれた「ジェーン・エア」を彷彿とさせますが、何となくそのゴシック版という趣。設定だけ見ると「ねじの回転」なんかも思い浮かぶんですが、あれに比べるとこの話に出てくる怪異は自己主張が強いので、本当に怪異があったのか、それともねじれた悪意がそう見せたのかというひっそりした恐怖はありません。

むしろ若い家庭教師として館を訪れたテティの心境、愛が壊れて彼女がぽっきり折れてしまったその心理の方が堪えた。あなたは僕たちに破滅をもたらすだろうと予言されたテティだけど、ヒルボーン兄弟が最初に彼女に破滅をもたらしたのではなかったか。たとえ不幸になったとしても、ヒルが彼女を守る為にやったという行動よりも綺麗に彼女を壊すことは出来なかったはず。彼女はもう二度と昔の優しくて温かみのある女性に戻ることは出来なかったのだから。

そっくりな双子の物語は、割合思った通りのところに着地するので、それに対する感想はあまりないのですが、最後はどうあってもこういう所に行ってしまうというのが寂しい。
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by yamanochika | 2014-04-19 17:25 | その他読んだもの

ケイト・サマースケイル著 早川書房刊

1860年、ヴィクトリア朝時代のイングランドのマナーハウスで起きた当主の3歳の息子の惨殺事件。

殺害された子供は施錠された屋敷内におり、犯人になりうるのは屋敷内にいた人物だけ。犯人は使用人か、家族なのか。事件後2週間経っても事件は解決せず、遂にロンドンから凄腕の刑事が呼ばれる。スコットランド・ヤードに刑事課が設立された当初に任命された最初の刑事の一人、ウィッチャー警部だ。

ウィッチャーは優れた推理力で真相に迫っていくが、非協力的な遺族や地元警察、プライバシーを神聖視する風潮、加熱する報道などによって捜査を阻まれ、事件は数奇な運命を辿る…。

マナーハウスの密室で起きた殺人事件、秘密を抱えた家族、そこに優れた推理能力を持つ探偵がやってきて家族の秘密が暴かれていく…、とまるで古典的な推理小説の筋立てのような事件ですが、そもそもこの事件が探偵小説に影響を与え、探偵ブームを作り、数多くの探偵小説が生まれるきっかけとなった事件となれば既視観があるのも当たり前。

本書はその事件について当時の資料を元に、推理小説風にまとめたノン・フィクションになります。事件当時のロード・ヒル・ハウスやその住人についての概要、ウィッチャーが登用されたスコットランド・ヤードの刑事課や彼らを取り巻く環境等が分かりやすくまとめられ、事件の推移や作者による結論も納得。

ウィッチャーの捜査は報告書等から犯人に辿りついてはいるものの、起訴するまでには至らず、結局事件の「解決」は犯人による自白によってもたらされる。古典的推理小説においては、事件の解決そのものが真犯人による自白や手紙によってなされるんだけれど、これもこの事件からの伝統なんでしょうか。事件は解決したとはいっても、犯人の自白にしても色々な含みを残すもので、曖昧な部分が多いところもこの事件を元に創作する人を増やしただと思います。何と言うか、補完意欲が湧くっていうやつですね。

事件が解決した後のケント家の人々のその後を見ていると、家族の不思議というものに驚かされます。あれだけの事があっても、家族は家族で、絆が繋がっているという不思議。これが血は水よりも濃いということなんだろうか。事件によって色々な人たちに波紋が齎されているのですが、ウィッチャーのその後が名誉回復もされ、幸せな晩年を送っている事には救われました。
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by yamanochika | 2013-11-05 00:02 | その他読んだもの



ノムさんの本2冊。

1冊目は「阪神タイガース暗黒時代再び」 宝島新書刊 

阪神タイガースが勝てなくなってきたのかを分析、どうやったら勝てるようになるかを語ってます。個人的に阪神は暗黒時代の方が記憶に残っているので、強い阪神よりも暗黒阪神の方がしっくりくるんですけれど、こういう本が出せる位人気があるチームなので、強い方が野球に活気は出るのは確かなんだよねえ。ジレンマ。 

せっかく藤浪くんという超大型ルーキーを取ったので上手く育てて欲しいところですが、藤浪が活躍したら勝っても負けてもそれだけで盛り上がって終わっちゃいそうな気も。とりあえずは山田勝彦コーチの捕手育成能力を注目してみます。



こっちはPHP新書から出たサンケイスポーツに連載されている「ノムラの目」、2012年に以前に書かれた日本シリーズの解説を併せて収録したもの。今現在のプロ野球をリアルタイムで書かれたコラムなので、現状分析が面白い。去年の話なので、実際結果がどうなったかと比較できますしね。

日本シリーズ解説は、過去の名勝負中心。「江夏の21球」あり、1985年の阪神タイガース優勝あり。こちらは元の試合がドラマチックなものなので、解説も読みごたえありました。うーんどうも年寄りにありがちな昔の方が良かったシンドロームにかかってますね。いかん。
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by yamanochika | 2013-02-25 22:28 | その他読んだもの



将口泰浩著 新潮文庫刊

第二次大戦時、アラスカのキスカ島に駐屯していた日本兵5,138名をアメリカの包囲網から全員無傷で脱出させた指揮官がいた。その指揮官である木村昌福中将の生涯をキスカ島からの撤退作戦を中心に描いた伝記。8月になるとよく戦争の本の特集がされるけど、その一環として店頭で並べられていた本。不勉強ながらそんな事があったころすら知らなかったので本を手にとってみました。

戦争の話、というよりもいわゆるリーダー論になるのかもしれませんが、ここに書かれている木村中将は豪放磊落にして一度部下の進言を取り入れたらその部下を信用して全てを任せ、大事な決断だけは自分が責任を取って決断をするという、まさに理想のリーダー。中でも素晴らしいと思ったのは戦争に対する考え方で、部下を一人も死なせずに勝つのが一番の良策。無駄に敵の命を奪う必要もない、という合理的な姿勢。実際に戦争中に敵の戦艦が撃沈したあと、避難船で逃げるのを待ってから戦艦本体のみを破壊したというエピソードも残っています。海軍兵学校の出身ながらハンモックナンバーは下の方で、実戦での腕前が評価されての抜擢。往々にしてこういう人は戦時にしか上の方に上がれないというのが不幸のもとか。
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by yamanochika | 2012-09-24 00:22 | その他読んだもの



橋本 清著 新潮文庫刊

甲子園のシーズンだったころに売ってたので思わず買ってしまった1冊。宮本さんとか桑田選手のインタビューが読んでみたかったってのもあるけど。小学生のときにKKコンビってのはものすごい衝撃を受けた甲子園のヒーローなんだけども(そりゃもう大人になってから熱闘甲子園のKKコンビ編DVDを買ってしまうほど)、意外にPL出身者をこの二人しか知らなくて、この本を読むまでこんなにPL出身のプロ野球選手がいるとは思いませんでした。ここにインタビューが載っている人すらプロになった選手の一部でKKコンビの出る前、23期から47期の卒業生まで途切れずにプロになっているという。高校野球の強豪校は他にもあるけど、これだけ通用しているプロ選手を輩出している学校はそうはないかも。同じ強豪校でも智弁和歌山とは好対照ですね。

野球とは関係なく、色々と勉強になる事もあってなかなか面白く読みました。山口の宇部商も逆転の宇部商ってイメージあるんだけど、PLもなんですね。これも知らんかった。何せ記憶に残っているPLはひたすら強かったから。最近あんまり甲子園に出てこなくなったのでそろそろ強いPLも見たいなあ。
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by yamanochika | 2012-09-08 09:15 | その他読んだもの

理想の野球



野村克也著 PHP新書

サンスポに連載されているノムさんのコラムを新書化したもの。なので主に11年のプロ野球についての分析になっててなかなか面白い。往年の名選手の話もいいけど、ノムさんの解説が分かりやすいので、今の戦況分析をもっとして欲しいなあ。去年の5月に出た今年のプロ野球の戦力分析も面白かったし。何より終わってみるとかなりあたってたので。

今回はクライマックスと日本シリーズについての解説もあり。特に日シリはここ何年かの試合を全て状況分析しておりましたが、ここ1,2年の日本シリーズは名勝負、といえる試合があまりないような気がするので、今年の日シリは目が離せないような緊迫した試合を見たいです。ってこれは本の感想じゃないな…。
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by yamanochika | 2012-03-26 00:26 | その他読んだもの

J・E・オースティン=リー 著 みすず書房刊 中野康司訳

ジェイン・オースティンの甥によるジェイン・オースティンの回想記。現在オースティンの言葉として引用されているものは、ほぼ子の著書によるもの。後書や解説などで軽く触れられている経歴は知っているけれど、実際にどんな所で育ったのか、そしてどんな風に生きたのかを知りたくて読んでみました。

ジェーン・オースティンの生地や先祖を語るにあたって、著者がジェーンの祖母や曾祖母が書いた手紙を載せているんだけど、これが案外面白い。18世紀初頭から中旬位にかけて、既に昔からの貴族階級がつつましい暮らしをしていたのに対し、貿易などで富を築いた新興階級が台頭していて、彼らの方が豪勢な暮らしをしているんですね。そういう事情が、貿易商の未亡人である祖母に甘やかされている娘にあてた母親の手紙から推察出来て面白い。

更にヴィクトリア朝人でもある著者が、19世紀初頭のジェーン叔母の時代は、今なら召使がやるような仕事(針仕事や馬・猟犬の世話)等を家の住人が自分たちでこなしていた、と当時の生活を説明している箇所があるんですが、それだけヴィクトリア朝(特に前半)はイギリスが他国を圧して繁栄を謳歌していた時代なんだという傍証になっている。自分たちがやっていた仕事を人に回せるだけのお金があって、それで空いた時間を趣味に当てられるよになったってことですもんね。

と冒頭はジェーン・オースティンとあまり関係ない所で盛り上がってしまったんですが、掲載されているジェーン・オースティンの手紙文がめっぽう面白い。人の特徴をうまくとらえて、ユーモアのある文章を書くんだけど、それでいて意地悪ではないんですよね。晩年、本を出版しある程度有名になった後、彼女にこういう設定で書いたらいいと色々な人が薦めてきた内容をまとめた文章なんて読むと、結構毒舌な面があったようですが。

これまで分からなかった、ジェーン・オースティンは人生のどの時代にバースにいたのか、が分かってちょっとすっきりしました。「高慢と偏見」の登場人物のその後とか、人に聞かれるとこの後はこうなったのよ、というお話をしてくれていたらしく、その後のエピソードが少し載っていたのも嬉しい。

そして未完の遺作となった「サンディリオン」。レジナルド・ヒルがこれを元に書いた小説を先に読んだんですが、確かに登場人物と背景の設定はオースティンそのまま。傲慢で俗物な金持ちの未亡人、彼女の遺産を狙う親族たち、とくれば推理小説に仕立てたくなるもので、これをオースティン本人が書いたら、どんな作品になっていたのか読んでみたかった。ほぼ登場人物の紹介の部分で終わってしまっているんですが、すごくキャラが立っているんですよね。19世紀の人ではなく、現在にいてもおかしくなさそうな普遍性があるのがすごい。そこが、オースティン作品の全てに共通した魅力なんですけれども、オースティン自身が非常に生き生きした女性だったのかなーというのが本書を読んだ感想です。ジェーン・オースティン作品が好きなら読んで損なし。
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by yamanochika | 2011-08-20 02:25 | その他読んだもの

一流の条件

野村克也著 朝日新聞出版社刊

昭和60年に週刊朝日で連載されていた野球コラムの文庫化。当時活躍した野球人が活躍に合わせて取り上げられていて、今読むとかえって新鮮。秋山監督が期待の新人!だったり、原監督の選手としての評価が書かれていたり、ロッテ時代の落合監督との対談が載っていたり。今は監督やコーチになっているような方々や、当時は評価されていたらしいけど今では名前も知らないような選手のリアルタイムでの活躍ぶりや活躍の理由が分析されていて面白い。何より、昭和60年と言うのは阪神タイガースが優勝した年でもありまして、阪神や他のチームの戦力分析、その他周りの状況が分かるのが面白い。

当時、阪神が優勝した事は覚えているけど、どんな戦力だったのかとか全く知らなかったし、セのチームですらどんな選手がいるかなんて有名どころしか知らなかったので(つか野村監督の名前を知ったのもヤクルトの監督になってからだし)この年どうして阪神が優勝できたのか、というのが詳しく解説されていて、今になって納得。これで連覇や!って言われていたのに何故翌年優勝出来なかったのかも納得。私の記憶にある頃には既に秋山さんはベテラン扱いで、清原が西武にいたんだけど、西武が黄金時代を築くのはこの後なんだな。

しっかし昭和60年頃に書かれた本なのに、表紙は現在の野村監督の肖像画風イラスト。なんでや(笑)
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by yamanochika | 2011-07-04 01:29 | その他読んだもの

考える野球

野村克也著 角川SCC新書刊

新作ということで読んでみました。

前に読んだ本よりちょっと掘り下げられている感じで、割合最近の選手についても分析されているので面白い。特にピッチャーについては、どういう所を見てこのピッチャーはプロでやっていけると思うかが書かれているのが勉強になった。何と言うか、いつも本を読むたびに、なるほどこういう見方があるのか、こういう視点で見てこういう勝負をかけたのか、という新しい視点が開けるのがすごい。読んだ時はおぉー!と思うのに、実際に試合見ている時はなかなかこういう視点になれないのが難点です。1試合丸丸解説聞きながらみたいなあ。
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by yamanochika | 2011-06-14 00:18 | その他読んだもの



ジェローム・K・ジェローム著 中公文庫刊

「犬は勘定に入れません」や「絞首台までご一緒に」みたいな「ボートの三人男」へのオマージュ的作品は読んだことがあるのに、肝心の本家を読んだことがなかったので手にとってみました。19世紀の人が書いたユーモア小説なんて今の人間が読んで笑えるの!?という心配はあったんですけど、これがなかなか楽しい。大笑い、というよりニヤリという笑いが漏れる、といった感じ。

内容としては、三人の男が休暇を過ごすのに、海がいいか、保養地がいいか話合った挙句、テムズ河をボートで漕ぐ事にする、という発端から始まって、準備に纏わる騒動、船旅の様子、ボート漕ぎを辞めるまでを書いた紀行もの。元々は作家にはユーモア小説を書くつもりはなかったそうで、最初はテムズ河周辺の風物に纏わる故事や教養を啓蒙する内容にするつもりだったらしく、その名残であちこちに残っているんですが、とにかくあちこちで話が飛ぶ。

ボートを漕ぐこと、あるいはボート漕ぎの後宿に泊まること、何か一つするたびに作者がかつて経験した事に話がおよび、そういえばこういう事があった、ああいう事もあった、こんな話を聞いた、と続いていく。その脱線や脱線した内容がおかしさを生むんですが、ともかく立派な紳士が真面目な顔で変な事をやっている事がそもそも笑える(らしい)。らしいっていうのは立派な紳士というものがいなくなった時代の人間の感想で、当時の人に一番受けたのはそこのとこらしいのです。

割とさらっと犬の死体が出てきたり、自殺した女性の遺体を発見したり、殺伐とした話題が笑いに来るんで出てきていて、その辺に時代を感じるんですけれども。一番笑ったのは白鳥の下り。案外凶暴なんだな。出てくる動物は犬のモンモランシーなのに、何故か猫の方が印象に残ったのがすごい。犬は勘定に入りませんで、何故猫があれだけ出張ってたのか理解した。
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by yamanochika | 2011-05-22 02:32 | その他読んだもの

日々読んだ本の記録。他映画、漫画等の感想などあれこれ。感想はネタバレありです。ご注意下さい。
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