死のドレスを花婿に

ピエール・ルメートル著

「その女、アレックス」を読んでから続けて読んだルメートル作品もこれで最後。
読み終わった後に後味の悪さが残るイヤミスでした。

最初は、キャリアを重ね幸せな結婚生活を送っていた女性ソフィが記憶障害を起こし、転落していく姿が描写される。記憶が飛んだ後に、自分が何をしているか分らない。ついには殺人事件を起きるが、自分が犯人なのか、そうではないのかさえ自分で確信がもてない。追われるままに逃げる彼女の追い詰められた姿と逃亡生活が切々と描写されたあと、一転して彼女を追いつめ、「病気」になるように仕向けた男が登場し、事件の裏側が語られていく。

最終的に、ある意味すっきりする展開にはなるものの、犯人の追い詰められ方も後味が悪く、しかし彼がやった事を考えると当然の報いでもあり、しかしながら追い詰められた姿を見るとやはり後味が悪い。最低の男なのに、なんだか同情してしまう。それが嫌な後味になって残るのだと思う。
復讐が終わったところで、ソフィの失ったものが戻ってくるわけでもないしねえ。

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by yamanochika | 2018-01-19 00:18 | 海外ミステリ

傷だらけのカミーユ

ピエール・ルメートル 著 文春文庫刊

カミーユ警部3部作の完結編。

カミーユが付き合っている女性アンヌが宝石強盗に巻き込まれ重傷を負った。病院から連絡を受けたカミーユは上層部に自分とアンヌとの関係を隠したまま捜査を担当する。目撃者である彼女の命を執拗に狙う犯人。カミーユは残忍な強盗の正体を探るが、そのために警察内での立場も危うくなり…。

かつて愛する者を失い、再び愛する者を失うことを恐れるカミーユ警部の姿が痛々しい。前作に比べると、事件の様相がガラっと変わるような視点の変化はなく、作中での描写からおそらくこうであろうという通りの展開になるんですが、その分自分の運命について決断したカミーユとその孤独が身にしみる。

作品として綺麗に完結しているのですが、その後のカミーユの姿をほんの少しでも見てみたい。

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by yamanochika | 2018-01-19 00:05 | 海外ミステリ

天国で、また会おう

天国でまた会おう

ピエール・ルメートル著 ハヤカワミステリ文庫刊

第一次大戦の終盤、戦場で上官プラデルの悪事に気付いたアルベールはプラデルに殺害されそうになり、更に砲撃で生き埋めになってしまう。偶然アルベールの生き埋めに気付いた同じ部隊の年下の青年エドゥアールがアルベールを救ってくれたのだが、それには高い代償が伴うことになり…。

戦争と、それに伴う喜悲劇を描いた作品。群像劇と言った方ががいいんでしょうか。
アルベールは、決断が遅く悲観的で真面目な青年で、おおよそ主人公向きとは言えない人物。もう一方のエドゥアールは、明るく楽観的で大胆な青年ですが、戦争末期に大きな悲劇に見舞われ何もかもを否定して生きている状態。その2人が戦後、一緒に生きていかなくてはならなくなり、やがて国を巻き込む大きな詐欺事件を引き起こす。
アルベールの恨みが、自分を陥れて謀殺しようとした悪党であるプラデルに向けられているのに対し、エドゥアールの恨みは戦没者を英雄として祭り上げながら、生還した兵士を厄介者扱いするフランスという国家に向けられている。だからこそ、国が自分たちに賠償をするべきであると言う発想に行き着くわけですが、どこかあっけらかんとしていて、憎めない。
ここに、戦没者追悼墓地の建設で一儲けを企むプラデルの話が差し込まれ、三者三様の話が繰り広げられている。
一方では、いつバレるのか、どこに落ち着くのか息を飲む2人の計画があり、一方ではプラデルの悪事が暴かれ、彼に相応しい結末を迎えるのを固唾を飲んで見守る事になる。更にそれらに関わる人々の視点、生き様が差し込まれ何とも言えない群像劇が繰り広げられていく。
おそらく、一番スカッとする生き方をしているのがエドゥアールの姉でのちにプラデルの妻となるマドレーヌで、終盤のプラデルに対する啖呵は拍手喝采したくなる。


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by yamanochika | 2018-01-06 20:04 | 海外ミステリ

約束

約束

ロバート・クレイス著 創元推理文庫刊

ロス市警のスコット・ジェイムズ巡査と相棒の雌のシェパードマギーを主人公としたシリーズ2作目

前作は、銃撃され相棒を失ったPTSDに苦しむスコットとマギーの苦しみ、彼らが仲間として絆を育み寄り添う迄を中心に描かれていたのですが、今作は事件の描写が多い。

ある事件の犯人を捜索して、スコットとマギーが発見した家には容疑者らしき男の遺体と大量の爆発物が隠されていた。直前にこの家の住人である人物と相対していたスコットは、犯人に命を狙われるようになる。
一方、失踪した女性の捜索を依頼された私立探偵のエルヴィス・コールが依頼人の要請で訪問した住宅から、怪しい男が逃亡するのを目撃する。住宅からは遺体と大量の爆発物が発見されるが、依頼人との守秘義務を守ったコールは警察に疑われる事に。

スコットと探偵であるコールの2つの視点をメインに話がスピーディに進んでいく。複層的な視点で事件を見られるので飽きずに読み進められるし、何よりスコットとマギーの絆、スコットを守ろうとするマギーの献身に心をうたれる。

今回登場したコールとその相棒パイクは、作者の別シリーズの主人公だそうで、熟練したコール達の行動を見せる事で、前作よりアクティブな話に仕上がっている。
安定して読める良作。

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by yamanochika | 2018-01-06 19:48 | 海外ミステリ

悲しみのイレーヌ

悲しみのイレーヌ
ピエール・ルメートル著 文春文庫刊

最初に「その女、アレックス」を読んでいて何が起きたのかを知っていたので読んだ後の衝撃は薄かったものの、第1部と第2部での視点の切り替わり、見え方がガラッと変わる驚きは味わえた。
事件の被害者が多く、アレックスに比べても陰惨な描写が多いので読む人を選ぶ内容であるとは思う。カミーユは、自分の短躯の原因になっている母親に愛蔵半ばする思いを抱いており、妻であるイレーヌには母親に寄せるような思慕を向けている。ある意味イレーヌはカミーユに取って愛する部分しか無い母であり、作中で重要人物でありながら彼女本人の印象は薄い。
何というか、アイコンのような存在なんですね。もっとキャラクターがつくりこまれていたら、最後の出来事にもっと衝撃を受けていたかもしれない。

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by yamanochika | 2018-01-06 19:11 | 海外ミステリ

日々読んだ本の記録。他映画、漫画等の感想などあれこれ。感想はネタバレありです。ご注意下さい。
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