ゴッサムの神々

リンジー・フェイ著 創元推理文庫刊

1845年、火事が原因で顔に火傷を負い職を失ったティムはNYに初めて出来た市警の警官となる。ある夜血まみれの少女とぶつかったティム。彼女の言葉通りに切り刻まれた少年の遺体がみつかり…

ニューヨークに初めて出来た市警について実際の人物を交えながら語られていく警察小説。導入部は話に入りにくいものの、事件が転がり始めてからは面白く読めた。
元バーテンダーのティムは人間観察能力が優れており、事件の推理にもそれが役に立つ。兄であるヴァルとの少し拗れた兄弟関係も味になっている。
時代背景を考えると事件の解決のつけ方にも納得。オチかと思った後ろに更に2段オチがありなかなか楽しめた。
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# by yamanochika | 2017-07-16 10:33 | 海外ミステリ

地中の記憶

ローリー・ロイ著 ハヤカワミステリ刊

15歳と半年を迎える成女の日、真夜中に井戸の底を見ると未来の夫が映るという。成女になったアニーは隣家のベイン家の庭に忍び込むが、井戸には顔は映らず畑で死体を見つけてしまう。

1950年代の南部を舞台に、風習の色濃く残る町で暮らすアニーと、1936年のサラの2つの視点で物語は進んでいく。

アニーにはジュナ叔母さんという語るに憚られる事をした叔母がおり、サラにはジュナという妹がいる。
両者を繋ぐジュナは何をしたのか。半ば町の伝説になっているジュナの話と、現在のアニー達に降りかかる出来事は関連があるのか。

全体的に湿った匂いが漂う。早い段階でアニーの実の母親はジュナであり、ジュナのせいで誰かが縛り首にされた事がわかる。奔放で魔性の女だったジュナ。彼女はどうなったのか、本当は何が起きたのかが話の焦点になるんですが、基本は少女の成長の物語。実の母親と育ての母と、どちらが本当の親なのか、という物語でもあります。
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# by yamanochika | 2017-07-09 12:58 | 海外ミステリ

寝た犬を起こすな

イアン・ランキン著 ハヤカワミステリ刊。

リーバス警部シリーズの最新刊。
といっても一度警察を定年退職したリーバスは、部長刑事に降格することを条件に再雇用されており、現在の身分は部長刑事。かつての部下であるシボーン・クラークが警部に昇進しているため、彼らの関係が微妙に変化しているのもシリーズファンとしては楽しい。プライベートでは親子のような関係性があり、しかし仕事においてはシボーンがリーバスに指示を出したり、ダメだしすることもしばしば。この2人の会話だけでも十二分に楽しめる。

女子学生が運転する車が起こした衝突事故。状況に不審な点があったため警察が呼ばれリーバスとシボーンが尋問に当たると、彼女に同乗者がいたことが判明する。しかし、彼女は口を閉ざし、何があったかを話そうとしない。
一方、組織改正があり犯罪捜査部に送られることになったフォックスは、内部監査の最後の仕事としてリーバスが若い頃に所属していた組織で隠ぺいされたと思われる殺人事件の捜査に乗り出す。そのためにリーバス本人に協力を頼むはめになり…。

スコットランド独立投票で揺れている時期を背景に、2つの事件が複雑に絡みあっていく。リーバスを敵視していたフォックスは、事件捜査に関してはリーバスに協力を仰ぐことになり、同時にリーバスも自分の過去の問題にフォックスの協力を仰ぐことになる。なんとも奇妙な協力関係が進み、2人のいがみ合っていた男たちが部分的にでも相手を認めていくようになる姿が丁寧に描かれていて面白い。黒に近いグレーな道を進みつつ、微妙なところでバランスを保っているリーバスは、フォックスに協力しつつ、尋問される過去の仲間たちにも情報を与えている。リーバスは彼らを裏切ることになるのか。
常に正道を歩くフォックスが、リーバスの捜査方法に与するようになるのか。
その辺りの攻防を丁々発止で描きつつ、最後のエピローグがやはり見事というしかない。




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# by yamanochika | 2017-07-01 00:59 | 海外ミステリ

ルート66

キャロル・オコンネル著 創元推理文庫刊

このシリーズ、大体主人公のマロリーかその仲間の一人が警察を休んで離れている(か無断欠勤)していて、仲間達がその人物を救うために動いているところから始まることが多いんだけど、今回もマロリーが失踪し、仲間が彼女の後を追うところからストーリーが始まっていく。

マロリーが姿を消したあと、彼女のアパートから自殺したと思われる女性の遺体が発見される。改造車を駆ってルート66を辿っていくマロリー。彼女の旅程は過去の誰か、恐らく彼女の本当の父親の辿った道のりらしい。マロリーを追っていく内に、彼らは失踪した子供を探す親たちのキャラバンと合流する。やがて、子供を探す親がシリアル・キラーに狙われているらしい事が判明し…。

マロリーのキャラ造形はミステリとしてはかなり突飛で、ある意味ファンタジーな存在なんだけれど、そこを受け入れられれば話自体はぐいぐい引っ張っていく力がある。マロリーの旅はノスタルジックな郷愁を誘うものなんだけれど、起きている事件はリアルで血腥い。そのギャップが収束した結末にカタルシスを感じる。

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# by yamanochika | 2017-07-01 00:39 | 海外ミステリ

氏家幹人 祥伝社新書刊。

章別に夜語りするような形式で書かれた江戸の犯罪考。有名な盗人の話も興味深かったですが、昔も今も変わらない夫婦の機微や、現在の無差別殺人と同じような犯罪が江戸時代にもあった事に驚かされた。
武器を規制しても殺人が無くなる事はないけれど、被害を抑える為に身近に大量殺人が起こせる武器が少ないと言うのは効果があるんだなあと実感。
最後を締めるのは鼠小僧の話で、講談でしか知らない人物なので興味深くよみました。ここまでの色々な犯罪を見ていると、小柄で身のこなしが敏捷、頭が回って人好きのする顔立ち、殺傷は行わず狙うのは大名屋敷のみ、気前がよく盗んだ金品は散財して庶民の懐を潤わせる。
と言う鼠小僧が庶民から人気が出たのが何故かよくわかる。

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# by yamanochika | 2017-05-15 09:38 | その他読んだもの

カウンターポイント

サラ・パレッキー著 ハヤカワ文庫刊

25年前に起きた家庭内での殺人事件。高校時代に付き合いのあったフランクの依頼を受けたヴィクが、その殺人事件で服役し出所したばかりのフランクの母ステラを訪ねた直後に、殺人事件にはヴィクの従兄弟でNHLのスーパースターだったブーム・ブームが関係していると告発される。
ブーム・ブームの名誉を守る為、ヴィクは過去を探り始めるのだが…。

最近はスケールの大きな話の多かったシリーズですが、今回はシカゴの、ヴィクの育った界隈を振り返るシリーズの原点に戻ったような作品に仕上がっています。
年齢を重ねてかつてのような無茶はしない、年齢を感じる発言も増えたヴィクですが、大切な人を守る為奮闘する姿は健在。
ロティではないけど、彼女を諌めるべきか命がけで他人の他人の命を守る為に奮闘する事を賞賛するべきか迷ってしまう。
作中にシカゴ・カブスが関わっていて、章タイが野球用語になっているのにニヤリ。
ブーム・ブームはヴィクにとっても周りの人達にとってもヒーローであり、賞賛すべき人物であるけれど、同じように地道に正直に働いて家族を養っている普通の人達もまたヒーローであると言うメッセージ性の強い作品だと思います。
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# by yamanochika | 2017-05-15 09:02 | 海外ミステリ

失踪者

シャルロッテ・リンク 著 創元推理文庫刊

イングランドの田舎町に住むエレインは幼馴染のロザンナの結婚式に招待されジブラルタルに向かうが、濃霧のために空港に足止めされ、親切な弁護士宅に一泊したあと失踪してしまう。5年後、エレインを招待したロザンナは、ジャーナリストの仕事で失踪し行方が分からないままの人物について調査する為にイギリスに帰国する。やがてロザンナの下にエレインを知っているという男から連絡があり…。

いくつかの事件や問題が絡み合いながら最後に一つの事件にまとまっていく。元々は別のものだったものが故意に絡まり合わされてたというべきかもしれない。
失踪したエレインは家庭に問題を抱えており、彼女が事件に巻き込まれたと思う人物もいたものの、全てを捨てて失踪しても仕方がないと思われていた。彼女の事が再び調査されて明らかになっていくのは、そういった人物の背景だったり、登場人物たちの抱える問題であり、一つを除いて「事件」の要素は薄い。なので、ミステリとしてよりも人間ドラマとして読む話だと思う。
最終的にはこれしか考えられないだろうという結末に辿り着くのだが、そこにいくまでに色々な種が播かれているいるので、文庫のあらすじに書かれていたような衝撃的な結末とは感じなかった。

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# by yamanochika | 2017-03-12 15:24 | 海外ミステリ

かくして殺人へ

カーター・ディクスン著 創元推理文庫刊

初めて書いた小説が大当たりを取ったモニカ。しかし小説の内容の事で毎日のように伯母から小言をくらい、家を飛び出してロンドン近郊にある映画会社の撮影所に赴き、脚本を手掛ける事になる。しかし、手がける作品は彼女が書いた小説ではなく、別の作家が書いたミステリ小説。さらに、何者かに命を狙われて…。

灯火管制下にあるイギリスが舞台とあって、これまた第二次大戦の影響が強く出た作品。若い女性であるモニカと、ミステリ作家であるカートライトの視点から書かれていて、この二人のラブロマンスの趣も。なんというか、作中に出てくる作品自体には何の関係もない映画にまつわる話をしている二人組を含めて、非常に「映画的」な内容になっている。タバコを巡るトリックはなかなか面白い。

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# by yamanochika | 2017-03-12 14:19 | 海外ミステリ

貴婦人として死す

カーター・ディクスン著 創元推理文庫刊

戦時下のイギリスで、俳優の卵と人妻が失踪し2日後に遺体で発見された。心中事件として扱われるが、人妻と親しかった老医師ルークは2人は殺害されたものと信じ、事件について調査を進めていく。たまたまその地に滞在していたヘンリー・メルヴェール卿と行動を共にし、犯人探しを続けるのだが…。

第二次大戦初期を舞台にした作品。戦争が間近に迫ってくる前の話ではあるのですが、戦争の影響がそこかしこに見え、作中の犯罪にも影を落としている。崖に向かって続いている2組の足音。しかし、死亡した男女の死因を考えると、二人以外の人間がその場にいないのは矛盾している。
という「密室トリック」を崩すことが前提にあるように見えながら、実はトリックを解くことが主軸ではなく、「何故に」が一番のポイントになっているのがミソ。

しかし、HM卿のシリーズというとスプラスティック・コメディが浮かんでくるけど、本作も例にもれず。車いすに乗ったHM卿の巻き起こす騒動がすさまじい。思わず近所の犬に同情してしまう。これを映像で見たら面白そう。

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# by yamanochika | 2017-03-12 14:12 | 海外ミステリ

出口のない農場

サイモン・ベケット著。ハヤカワミステリ刊。

フランスの田舎町。車内に血の付いた車から逃げ出した怪しげな男ショーン。しかしショーンは森の中で罠に掛かり足に傷を負って近くの農場の娘マティルドに助けられる。マティルドは彼の看病を黙々と続けてくれるが病院に連れて行こうとはせず、一家の父親は家族以外を敵視している。農場には何が隠されているのか。
ショーンは怪我が治るまでの間農場の仕事を手伝い始めるのだが。

閉塞的な町の更に閉塞的な農場。のどかな雰囲気の中、何かが隠されており緊迫感が増していく。ショーンにもまた秘密があり、農場の秘密がじわじわ分かるのと同時に彼の過去もじょじょに明らかになる。
この話を読んでいると昔フランスであった殺人事件を思い出すんですが、家族の薄暗い秘密と救われなさが辛い。
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# by yamanochika | 2017-01-21 17:19 | 海外ミステリ

日々読んだ本の記録。他映画、漫画等の感想などあれこれ。感想はネタバレありです。ご注意下さい。
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