マイルズの旅路

ロイス・マクマスター・ビジョルド著 創元推理文庫刊

皇帝の命で「キボウダイニ」という惑星の人体冷凍会社協会主催の会議に出席したところ、反乱分子らしき連中に拉致されたマイルズ。なんとか逃れたものの、薬物のアレルギーのため意識朦朧とし地下の冷凍保存施設をさまよっていたところを偶然出会った少年ジンに助けられる。

マイルズシリーズの最終巻。以前はこの後の話もあったような気がしましたが、日本では一区切りというところなんでしょうか。確かに若者だったマイルズも、今ではあのころのような冒険が出来る年齢でも無くなってしまったので、まあ仕方がないのかな。

死亡した人間を冷凍保存し再生させるという技術は過去にも語られ、実際にマイルズにも使用されていますが、この再生技術が国をあげた事業になっている惑星が舞台。正確には再生される前の、「冷凍保存」が売り物ですが、「死者の国」と「死者の権利」が大きな幅を聞かせていて少し怖い。色々と複雑な事情をマイルズが解き明かし、自分を救ってくれたジンと彼の家族を助けるという話になるんですが、話の主眼となるのはやはり最後の家族の出来ごとだと思うんですね。例えその技術が自分に適用できて、延命出来たとしても彼はその道を選ばなかったと思うんですが、家族にとっては出来る限り長生きして欲しいと思うし、なかなか難しい。


[PR]
# by yamanochika | 2017-07-23 22:08 | SF・FT

カイ・マイヤー著 創元推理文庫刊


アラビアンナイトの世界を舞台にした「嵐の王」3部作。
実際の歴史とは少し異なる、魔法が存在する世界。20年前に突如現れた魔人によって世界は分断され、サマルカンドの街は高い城壁によってかろうじて魔人から護られているものの外の世界との交易は禁止されている。
魔人の住む砂漠を魔法の絨毯を使って乗り越えバグダッドとの密輸貿易をおこなう密輸商人だったターリクは、今は同じく禁止されている絨毯乗りとしてレースに参加し、金を稼ぐ毎日を送っている。ある日、謎めいた美女サバテアにバグダッド行きを持ちかけられ断ったものの、弟のジュニスが彼女の口車に乗ってバグダッドへ向かった事を知り、彼らの後を追って砂漠へと旅立つ…。

魔法で作られた不思議な木馬が空を飛び、空中を絨毯乗りが飛び交う世界。世界の色は極彩色の魔法で彩られているのにどこか閉塞感があり、住んでいる人々も苦しんでいる。この閉塞感がどこから出てくるものなのかという謎が解き明かされた時に、あっとなった。謎が一つ解けるたびに新しい謎が生まれ、世界は広がっていくのに最後に辿り着くのは箱庭のような世界であるという。ターリク、サバテアなどの登場人物たちも魅力だけれど、この世界観が素晴らしいと思う。

[PR]
# by yamanochika | 2017-07-23 21:57 | SF・FT

バリー・ライガ著 創元推理文庫刊

シリアル・キラーを父に持ち、父によって英才教育を受け、いつか自分も父のような人間になってしまうのではないかと恐れながら生きていたジャズ。第1部は逮捕され刑務所に収容されていた父が脱獄したところで幕を閉じる。
第2部はその2ヶ月後、NY市の刑事がジャズの元を訪れNYで起きている連続殺人の捜査協力を依頼するところからスタートする。第2部、第3部は話が一繋がりになっており、新たな謎と事件を巻き起こしながらスピーディに進んでいく。父親がシリアル・キラーであるというのが新しいけれど、基本的には両親からの自立と成長を描いた作品。ソシオパスが神格化されているのが気になるものの、少年の成長ものとしては楽しい。


[PR]
# by yamanochika | 2017-07-23 21:40 | 海外ミステリ

マージェリー・アリンガム著 創元推理文庫刊

日本独自編集の短編集

2作目の短編集はピリッとした正統派のミステリが多め。犯罪の種類としては詐欺事件の解決が主ですが、キャンピオン氏の人柄が光っている。一番ピリッとした味を感じたのは「面子の問題」ですが。
[PR]
# by yamanochika | 2017-07-16 10:44 | 海外ミステリ

ゴッサムの神々

リンジー・フェイ著 創元推理文庫刊

1845年、火事が原因で顔に火傷を負い職を失ったティムはNYに初めて出来た市警の警官となる。ある夜血まみれの少女とぶつかったティム。彼女の言葉通りに切り刻まれた少年の遺体がみつかり…

ニューヨークに初めて出来た市警について実際の人物を交えながら語られていく警察小説。導入部は話に入りにくいものの、事件が転がり始めてからは面白く読めた。
元バーテンダーのティムは人間観察能力が優れており、事件の推理にもそれが役に立つ。兄であるヴァルとの少し拗れた兄弟関係も味になっている。
時代背景を考えると事件の解決のつけ方にも納得。オチかと思った後ろに更に2段オチがありなかなか楽しめた。
[PR]
# by yamanochika | 2017-07-16 10:33 | 海外ミステリ

地中の記憶

ローリー・ロイ著 ハヤカワミステリ刊

15歳と半年を迎える成女の日、真夜中に井戸の底を見ると未来の夫が映るという。成女になったアニーは隣家のベイン家の庭に忍び込むが、井戸には顔は映らず畑で死体を見つけてしまう。

1950年代の南部を舞台に、風習の色濃く残る町で暮らすアニーと、1936年のサラの2つの視点で物語は進んでいく。

アニーにはジュナ叔母さんという語るに憚られる事をした叔母がおり、サラにはジュナという妹がいる。
両者を繋ぐジュナは何をしたのか。半ば町の伝説になっているジュナの話と、現在のアニー達に降りかかる出来事は関連があるのか。

全体的に湿った匂いが漂う。早い段階でアニーの実の母親はジュナであり、ジュナのせいで誰かが縛り首にされた事がわかる。奔放で魔性の女だったジュナ。彼女はどうなったのか、本当は何が起きたのかが話の焦点になるんですが、基本は少女の成長の物語。実の母親と育ての母と、どちらが本当の親なのか、という物語でもあります。
[PR]
# by yamanochika | 2017-07-09 12:58 | 海外ミステリ

寝た犬を起こすな

イアン・ランキン著 ハヤカワミステリ刊。

リーバス警部シリーズの最新刊。
といっても一度警察を定年退職したリーバスは、部長刑事に降格することを条件に再雇用されており、現在の身分は部長刑事。かつての部下であるシボーン・クラークが警部に昇進しているため、彼らの関係が微妙に変化しているのもシリーズファンとしては楽しい。プライベートでは親子のような関係性があり、しかし仕事においてはシボーンがリーバスに指示を出したり、ダメだしすることもしばしば。この2人の会話だけでも十二分に楽しめる。

女子学生が運転する車が起こした衝突事故。状況に不審な点があったため警察が呼ばれリーバスとシボーンが尋問に当たると、彼女に同乗者がいたことが判明する。しかし、彼女は口を閉ざし、何があったかを話そうとしない。
一方、組織改正があり犯罪捜査部に送られることになったフォックスは、内部監査の最後の仕事としてリーバスが若い頃に所属していた組織で隠ぺいされたと思われる殺人事件の捜査に乗り出す。そのためにリーバス本人に協力を頼むはめになり…。

スコットランド独立投票で揺れている時期を背景に、2つの事件が複雑に絡みあっていく。リーバスを敵視していたフォックスは、事件捜査に関してはリーバスに協力を仰ぐことになり、同時にリーバスも自分の過去の問題にフォックスの協力を仰ぐことになる。なんとも奇妙な協力関係が進み、2人のいがみ合っていた男たちが部分的にでも相手を認めていくようになる姿が丁寧に描かれていて面白い。黒に近いグレーな道を進みつつ、微妙なところでバランスを保っているリーバスは、フォックスに協力しつつ、尋問される過去の仲間たちにも情報を与えている。リーバスは彼らを裏切ることになるのか。
常に正道を歩くフォックスが、リーバスの捜査方法に与するようになるのか。
その辺りの攻防を丁々発止で描きつつ、最後のエピローグがやはり見事というしかない。




[PR]
# by yamanochika | 2017-07-01 00:59 | 海外ミステリ

ルート66

キャロル・オコンネル著 創元推理文庫刊

このシリーズ、大体主人公のマロリーかその仲間の一人が警察を休んで離れている(か無断欠勤)していて、仲間達がその人物を救うために動いているところから始まることが多いんだけど、今回もマロリーが失踪し、仲間が彼女の後を追うところからストーリーが始まっていく。

マロリーが姿を消したあと、彼女のアパートから自殺したと思われる女性の遺体が発見される。改造車を駆ってルート66を辿っていくマロリー。彼女の旅程は過去の誰か、恐らく彼女の本当の父親の辿った道のりらしい。マロリーを追っていく内に、彼らは失踪した子供を探す親たちのキャラバンと合流する。やがて、子供を探す親がシリアル・キラーに狙われているらしい事が判明し…。

マロリーのキャラ造形はミステリとしてはかなり突飛で、ある意味ファンタジーな存在なんだけれど、そこを受け入れられれば話自体はぐいぐい引っ張っていく力がある。マロリーの旅はノスタルジックな郷愁を誘うものなんだけれど、起きている事件はリアルで血腥い。そのギャップが収束した結末にカタルシスを感じる。

[PR]
# by yamanochika | 2017-07-01 00:39 | 海外ミステリ

氏家幹人 祥伝社新書刊。

章別に夜語りするような形式で書かれた江戸の犯罪考。有名な盗人の話も興味深かったですが、昔も今も変わらない夫婦の機微や、現在の無差別殺人と同じような犯罪が江戸時代にもあった事に驚かされた。
武器を規制しても殺人が無くなる事はないけれど、被害を抑える為に身近に大量殺人が起こせる武器が少ないと言うのは効果があるんだなあと実感。
最後を締めるのは鼠小僧の話で、講談でしか知らない人物なので興味深くよみました。ここまでの色々な犯罪を見ていると、小柄で身のこなしが敏捷、頭が回って人好きのする顔立ち、殺傷は行わず狙うのは大名屋敷のみ、気前がよく盗んだ金品は散財して庶民の懐を潤わせる。
と言う鼠小僧が庶民から人気が出たのが何故かよくわかる。

[PR]
# by yamanochika | 2017-05-15 09:38 | その他読んだもの

カウンターポイント

サラ・パレッキー著 ハヤカワ文庫刊

25年前に起きた家庭内での殺人事件。高校時代に付き合いのあったフランクの依頼を受けたヴィクが、その殺人事件で服役し出所したばかりのフランクの母ステラを訪ねた直後に、殺人事件にはヴィクの従兄弟でNHLのスーパースターだったブーム・ブームが関係していると告発される。
ブーム・ブームの名誉を守る為、ヴィクは過去を探り始めるのだが…。

最近はスケールの大きな話の多かったシリーズですが、今回はシカゴの、ヴィクの育った界隈を振り返るシリーズの原点に戻ったような作品に仕上がっています。
年齢を重ねてかつてのような無茶はしない、年齢を感じる発言も増えたヴィクですが、大切な人を守る為奮闘する姿は健在。
ロティではないけど、彼女を諌めるべきか命がけで他人の他人の命を守る為に奮闘する事を賞賛するべきか迷ってしまう。
作中にシカゴ・カブスが関わっていて、章タイが野球用語になっているのにニヤリ。
ブーム・ブームはヴィクにとっても周りの人達にとってもヒーローであり、賞賛すべき人物であるけれど、同じように地道に正直に働いて家族を養っている普通の人達もまたヒーローであると言うメッセージ性の強い作品だと思います。
[PR]
# by yamanochika | 2017-05-15 09:02 | 海外ミステリ

日々読んだ本の記録。他映画、漫画等の感想などあれこれ。感想はネタバレありです。ご注意下さい。
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30