白ゆき姫殺人事件

白ゆき姫殺人事件
湊かなえ著 集英社刊

会社で一番の美人が山の中で殺害され発見された。事件を報道するマスコミ、会社の同僚や容疑者と目された人物に対する周りの証言、ネットでの反応などから事件や犯人像が勝手に作られてていく。
伝聞形式で語られるため、語る人の視点によって同じ人物とは思えないほど人物像が変わっていく。ネットやマスコミに勝手に「お話」が作られて容疑者にされた人の個人情報がばらまかれ、誹謗中傷される恐怖。
この辺りのいやらしさは上手かったと思う。
ただ構成としては、証言の後に資料としてSNSのやり取りや雑誌記事が掲載されているが、解答が出る前の場所に挟みながらの方が臨場感があって良かったのでは。
犯罪やその後の展開は偶然に頼る要素が強く、最後はあっさりしていて、もう少し何か描写が欲しい。面白いとは思うけど物足りない話。


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# by yamanochika | 2018-09-08 22:04 | 国内作家

テロリスト

マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー著
角川書店刊

マルティン・ベックシリーズ10冊目にして最終巻

何が目的か分からない国際的なテロリスト集団によるテロが各国で頻発。予定されているアメリカの上院議員の訪問もテロリストの標的にされる可能性が高い。ベックは特別対策本部の責任者となるが…。

現在もテロ組織の暗躍は続いていますが、70年代もまたテロリストが横行していた時代なのを実感させられた。ベック達、中でも実際に南米でテロ集団の活動を目の当たりにしたグンヴァルト・ラーソンが中心となったテロ組織との対決が本作の見どころ。どうやってテロを阻止し、彼らを捕縛出来るかが焦点になるのだが、思いがけない所から足を掬われるような出来事が起きる。この意外な繋がり方には驚かされたし感心した。
ただ作中に出て来た若い女性の考え方、行動に全く共感が出来ず、また作者がこの考え方を良しとしている所が、古い時代の作品なのだと感じる。
と言うか、ここまで社会常識、一般教養の無い人間がいるのだろうか?
本作に限らず、シリーズ後半は社会批判が強くなり、若者による犯罪や警察官による警官組織の批判などが増えていく。
作品内のキャラクター達の変化や、地味な捜査が一点に繋がる様は魅力的でミステリとしても読んでいて楽しい。しかし社会批判については、取り扱い方が直截的で、いまいち共感出来ない。もう少し、批判を込めつつ、社会情勢を描写するに留め、読者の判断に委ねて欲しかった。


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# by yamanochika | 2018-09-08 21:37 | 海外ミステリ

警官殺し

警官殺し
マイ・シューベル&ペール・ヴァールー著
角川書店刊

マルティン・ベックシリーズ9冊目
ベックはスウェーデン南端の田舎町で起きた女性の失踪事件に中央から派遣される。その女の隣人で容疑者とみなされている男はかつて「ロセアンナ」事件でベックが逮捕した人物であり、マルム警視長は男の逮捕を主張するが。

かつての事件の犯人が関わっているため、田舎町に派遣されるベック。「犯人」との対話、仕事へのやり切れなさが書かれた作品。タイトルである警官殺しは、作中の別の事件で起きた出来事で、若者が関わったこの事件はさらに遣る瀬無い気持ちにさせられる。
ロセアンナ事件から10年の。ベックの私生活ほ変化しており、スウェーデン社会もまた変質している。作中のキャラ達の変化もまた読みどころの一つだが、死亡した人物もいれば警察を去る人物もおり、ある意味作品での最も大きな事件だったかもしれない。

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# by yamanochika | 2018-09-08 19:16 | 海外ミステリ

密室

密室
マイ・シューベル&ペール・ヴァールー著
角川書店刊

マルティン・ベックシリーズ8冊目。
前作の事件で重傷を負ったベックが職場に復帰。奇妙な密室での自殺の報告書を渡される。

シリーズも7冊目に入り、いよいよ政府批判の論調が強くなっていく。ミステリとしては、ベックに渡された密室での事件、ラーソンやコルベリが捜査する大規模な銀行強盗事件が絡み合い、シリーズ中でも最も本格ミステリの要素が強いのでは無いか。
最後の結末は何とも言えず皮肉が効いている。

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# by yamanochika | 2018-09-08 19:07 | 海外ミステリ
魂の図書館 上・下 ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち3

ランサム・リグズ著 潮文庫刊 

ピキューリアの子供達の魂を喰らおうとする敵、ワイトのコールの手から何とか逃れたジェイコブとエマは犬のアディスンと協力し、子供達の臭跡を追い荒廃したタイムループへ潜入する。

最終巻。ジェイコブ達が乗り込んだタイムリープが最近読んだ本に出てきた悪臭漂うロンドンの下町そのもので、こういう地区を作ったイギリス政府こそが最も責められるべき存在だったのでは無いかと思った。
それはさておき、ジェイコブ達、特にエマとアディスンが同じピキューリアであれば(相手にメリットがなくても)協力してくれて当然と言う考え方で、やるなと言われた事を必ずやるので読んでいて若干イライラ。
ものすごく危険な目に会うんですがまあ当然だろうとしか思えないんですよね。
エマ達とは考え方や立場が異なるピキューリアが出てきたのは世界が広がって良かった。
ジェイコブと祖父の持つホロウガストを見る能力はホロウガストが出現する前はどのようなものだったのか、そもそもピキューリアと一口に言っても一枚岩では無かったのでは?という疑問にもきちんと答えがあり、オチのつけ方も申し分無い。ただ読み始めた時の未知のものへのワクワク感は1巻が最も高く、そこから小さくまとまってしまった感じが残念。


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# by yamanochika | 2018-09-08 18:46 | SF・FT

唾棄すべき男

マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー著
角川文庫刊

原語からの新訳版の出版が止まってしまったので、原語から翻訳された英語版の翻訳である旧作版を読了。
マルティン・ベックシリーズ7作目。
午前2時、病院に入院していた男が銃剣で殺害された。殺害された男は現役の警察官であるニーマン主任警部。むごたらしい殺害方法は、犯人が被害者に強い恨みを持っていることを伺わせるものだった。ニーマンとはどんな人物だったのか?

このシリーズの特徴としては、60年後半から70年代半ばのスウェーデン社会が活写されており、スウェーデンの抱える問題が作中にも反映されているということ。シリーズが後半に進むにつれ、作中での社会批判も強くなっていき、今回は警察という組織に対し、組織に属する警察官からの批判の目が向けられる。
作中でのスウェーデン社会への批判については、今の情勢からみて賛同できないことも多く、さらに批判が直接的すぎて作品としての面白さが薄れている部分もあるのですが、地味な捜査から犯人特定へと結びつく、この地味さがたまらなく面白い。キャラクターとしては、マルティン・ベックよりも、一見脳みそまで筋肉で出来ていそうな粗野な男なのに、実際は複雑さを内面に持ち、緻密な捜査もできるグンヴァルト・ラーソンが好きです。ベックが自己批判のあまりばかげた事を行った後、彼がとった行動がたまらない。

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# by yamanochika | 2018-09-06 23:22 | 海外ミステリ
肺都 アイアマンガー三部作3
エドワード・ケアリー著 東京創元社刊

ヴィクトリア女王の命により、病気を広める元とされたフォーリッチンガムは住民ごと焼き払われる。虐殺から逃れたアイアマンガー一族は、地下鉄道を通り、ロンドンの街へ。

当時の、実際に汚い、煙で覆われる事も多く霧がかかった街ロンドンの情景が描かれる。アイアマンガー一族がフォーリッチンガムの住民から憎まれる存在であってもロンドンの住民が善人でえるとは言えない。アイアマンガー一族は、ある意味塵芥の化身であり、彼らが姿を変えたものには納得させられた。物語は塵を下町に押し込めた現実のロンドンの写し絵であり、彼らがヴィクトリア女王の政府と対立する事になったのも必然と言える。
激動の戦いを経ながら物語の着地点は穏やか。
まとまりの良い話だった。

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# by yamanochika | 2018-08-25 17:56 | SF・FT
穢れの町 アイアマンガー三部作2
エドワード・ケアリー著 東京創元社刊

舞台は堆塵館から、穢れの町へと名前を変えたフォーリッチンガムへ。主人公は家庭教師と月桂樹の館で暮らす少年、ヘンリー。前作のラストからおそらく彼が手にしている金貨がそうなんだろうと思いましたが、2作目で明かされた新たな設定には驚かされた。
塵芥にまみれたスチームパンクと言ったところ。堆塵館に仕えていた召使達の盲目的な忠実さといい、19世紀のイギリスの世相がよく反映された話だと思う。
名前を奪われ、上級の召使以外は全て同じ名前で部品のように扱われ、交換されても誰も疑問に思わない。そのような世界であるから、設定に説得力があるのかもしれない。
今作でもルーシーの元気さは健在で、一服の清涼剤となっている。前作以上に衝撃的なラストを迎え物語の舞台はロンドンの街へ。アイアマンガー一族はどうなるのか。

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# by yamanochika | 2018-08-25 17:46 | SF・FT
堆塵館 アイアマンガー三部作1
エドワード・ケアリー著 東京創元社刊

堆塵館に住むクロッドという少年の独白から物語が始まる。
ロンドン、フォーリッチンガムパークにある館て一族の者と暮らす彼は物が喋る声が聞こえると言う。
変わった一族の話が続く中、フォーリッチンガムに住む少女ルーシーの物語が始まり、やがてクロッドとルーシーが出会った時に物語が動き出す。

物語が進むにつれ明らかになる世界観が凄まじい。塵芥に囲まれて存在する堆塵館。捨てられたモノを管理する権利を持ち、狭い社会の中で強権を振るうアイアマンガー一族。クロッドに聞こえる物たちの声の正体、高い壁でフォーリッチンガムを囲い、自分達だけを守ろうとしているロンドンの傲慢さ。読んでいると体が煤で黒くなるような感じ。衝撃的なラストの続編が楽しみ。

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# by yamanochika | 2018-08-25 17:36 | SF・FT

甘美なる危険

甘美なる危険
マージェリー・アリンガム著 新樹社刊

アリンガムのアルバート・キャンピオンもの。初期作なので、キャンピオンが若い!先に後期作を読んでいるので、軽めな冒険ものの雰囲気に驚きました。鐘を使った共鳴のアイデアは面白い。アマンダがまだまだ子供で、後期作のアマンダを見返したくなった。

殺人者の街角

こちらは同じくマージェリー・アリンガムの後期作。ここではキャンピオンはアドバイザーを務める脇役であり、落ち着いた年代の人物として登場。探偵役を務めるのはルーク警部ですが、どちらかと言うとサスペンス寄りなので、探偵か事件を解決するような話ではありません。
まず名前の分からない犯人が登場し、殺人を犯す。やがてあるきっかけから犯人が警察に追い詰められていく。
見所は冷酷な殺人者が、ある女性と対決するシーン。徐々に馬脚を現していった犯人に、この女性が語った言葉が重い。話の作り方、構成の巧さに感心した。

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# by yamanochika | 2018-08-18 17:49 | 海外ミステリ

日々読んだ本の記録。他映画、漫画等の感想などあれこれ。感想はネタバレありです。ご注意下さい。


by yamanochika
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