人気ブログランキング | 話題のタグを見る

アメリカ第二次南北戦争

佐藤賢一著 光文社刊

2013年、大統領暗殺がきっかけとなり、アメリカ合衆国からアメリカ連合が独立宣言をし、アメリカは内乱状態に陥る。2015年に休戦が成立、翌16年、アメリカ国内の内情を調査するため、内閣官房室の森山悟はアメリカ合衆国へ派遣されるが…。

近未来のアメリカで内乱が起き国が分断状態に…、という話はそれなりに見かけるんですが、この話では内乱に陥ったアメリカを描いているというより、日本人から見たアメリカ観を描かれている。小説内でも森山悟という政府の諜報機関に勤めているとは思えないほどゆるい感じの男視点でアメリカが描写されているんですが、二つのアメリカの政治体制や戦争についてといった固い内容を期待すると肩透かしにあう。

戦争状態の国を通り抜けるとあって、それなりに危険な目にあったり「宗教国家」としてのアメリカの側面については面白かったけど、視点が一義的に感じられていまいち。緊迫した状況なはずなのに緊迫感が感じられないのが辛い。それに現在のアメリカ国内のWASPと有色人種の割合を考えると、アメリカ連合の人種隔離政策に実効性が感じられないんだよね。実行しようにも軍隊にも有色人種も多いし、難しいのでは。この辺にリアリティが感じられたら、日本人から見たアメリカ観にもう少し共感出来たかも。

自分の欲求に忠実なヴェロニカのキャラクターなんかは突き抜けてる感があって好き。
by yamanochika | 2008-12-09 01:17 | 国内作家
<< 孤独な場所で ウーマンズ・ケース 上・下 >>