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裏切りの月に抱かれて

パトリシア・ブリッグス著 早川FT文庫刊

舞台となるのは現在とアメリカ。ただし、超自然的な者達が人間にまぎれて暮らしていて、二十年前に存在を隠しきれなくなったとフェイ達が自らの存在をカミングアウト。徐々に他の者達も明らかにされようとしている世界。

主人公のマーシィは、今では数が少なくなったアメリカ原産の「ウォーカー」と呼ばれるコヨーテに変身出来る女性。人狼の群れに育てられ今は田舎町でフェイのジーから受け継いだ自動車修理工場を切り盛りしている。その彼女の元に、若い人狼がやってきた事から話が始まっていく。

主に人狼たちの世界がテーマになっているんだけけど、狼の群れ内の抗争や、色々な不思議な存在達の社会構造が興味深く面白い。どこの世界にも社会力学や政治抗争があって、それに弱い部分を見せないように虚勢を張りながら、飲み込まれないでいるマーシィの気っ風の良さも読んでいて気持ちがいい。誰が、何のために裏切りを行ったのかが解き明かされていく終盤は質の良いミステリを読んでいるよう。

作品のもう一つの目玉は、マーシィと彼女といい雰囲気の隣の男人狼のアダムと、同じく彼女の初恋の男で人狼サミュエルとの三角関係。どちらとも何となくいい雰囲気があって、この先どう発展するのかが気になる。三作目では決着がついているそうですが、日本でも読めるといいなあ。
by yamanochika | 2009-01-31 11:55 | SF・FT
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