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天使が震える夜明け

P・J・トレイシー著 ヴィレッジ・ブックス刊

ウィスコンシン州の田舎町、夜明けの教会で老夫婦が銃殺されているのが見つかった。異常に信心深い老夫婦は同じ教会の信者から煙たがられていたが、やがて彼らが名前を変えて各地を転々としていたことが判明。彼らは誰かから逃げていたのだろうか?一方、隣州のミネアポリスでも、ネット上で公開されていたPCゲームを模したような連続殺人が発生。ゲームを作った会社モンキーレンチの面々が容疑者のトップに躍り出るが、彼らもまた過去を抹消して生きていた。捜査を続ける中である事実が浮かび上がり、一見無関係に見えた二つの事件が交錯し…。

ネット上の感想で、気になってた<ミネアポリス警察>シリーズの1作目。
ウィスコンシンでの事件と、ミネアポリスの事件が交互に進んでいき、徐々に近づいていく進行が面白かった。読者にはある程度の手がかりが与えられているんだけど、捜査官には分からないという点で、ミステリーというよりサスペンス風。それで、そこ、そこに手がかりがあるのに、とつい本に突っ込んでしまうんですね。

謎の集団として登場したモンキーレンチの人達にどんどん肉付けがされていって、最初はただ謎の女だったグレースも、人間味を増していく。話の進行と共に彼らの魅力が増していくのは、マゴッツィの心境と読者がシンクロしていくからでしょうか。銀の十字架が、単なるグレースを慰めるアイテムではなくて、一番最後で重要な役割を果たすのが良かった。

田舎町の保安官ハローラン&ボナーと大都会ミネアポリス市警の捜査官マゴッツィ&ジーノ、まるでよく似た双子のようなコンビの対比が面白い。脇を固める刑事達のやり取りや苦悩も話に深みを与えていると思う。10年前の事件の犯人が途中で犯行を思いとどまった事がちょっと不思議。それに今回の犯人がどのように被害者に近づいたか、って辺りはちょっと描写不足なのではないかと感じましたが、作品の面白さを減ずるには至っていないのでまあ及第点かなあと。スピード感もあってかなり読みやすい。
by yamanochika | 2009-11-02 01:15 | 海外ミステリ
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