ジャクリーン・ケアリー著 ハヤカワ文庫刊 3が発売されたので一気読み。 メリザンドの行方を追ってラ・セレニッシマにやってきたフェードル。セヴェリオの伝手を頼り、祖父である統領やその一族と会う事は出来たものの、メリザンドの行方は杳として掴めない。更にジョスランとの仲は悪化し、対にジョスランはフェードルの下を去ってしまう。そんな中、テールダンジュから消えた古参兵の行方について重大な秘密がわかり…。 舞台はテールダンジュからヴェネツィアをモデルとしたラ・セレニッシマに。各地の風土や伝説は実在の国からとりいれられているので、どんな場所か容易に想像できるのがこの話のいいところ。あちこちに手がかりが散りばめられつつ、遂にメリザンドが登場したときは閉塞感が募っていただけに反ってやっと来たという安心感が。ラ・セレニッシマ内部の主導権争いは概ね予定調和なんだけど、古狸な統領とのやり取りは読んでいて楽しい。 表紙からしてネタばれされているわけですが、牢獄島での最大の見せ場はやっぱりジョスラン登場ですよね。頑固で融通の利かない男だけど、ここぞ、という時に一番頼りになる男。あそこで来てくれたっていうのに感動したし、格好良すぎてどうしうようかと。王道を外さないって本当に素晴らしい。 「クシエルの矢」ではアングィセットであるフェードルの官能的な場面が見せ場の一つであったと思うのですが、「クシエルの使徒」ではジョスランとの関係に焦点があたってきて、その分精神的な葛藤や深みが書かれるようになった気がします。 宗教といえば、この世界は基本的にはキリスト教が国教化されなかった場合のローマ帝国後のヨーロッパになっているんだけど、今回基本的な神話が出てきてようやく女神様とエルーア様の関係を把握。神話が単なる神話のようで神様が実在しているのが面白い。 新しい国も登場しましたが、ハンガリーとかアルバニアっぽい感じ。またまたすごい所で区切られたけどこの苦境をどう乗り切るのかが楽しみ。ラ・セレニッシマの花争いは文章で読んでいても華やかで映像で見てみたくなった。
by yamanochika
| 2010-05-05 01:54
| SF・FT
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