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百年の孤独

G・ガルシア・マルケス著 新潮社刊

南米の架空の町マコンドで繰り広げられるブエンディア家100年の歴史。何度も繰り返し出てくるホセ・アルカディオ、あるいはアルレリャノという名前の男たち。ウルスラが「また同じことが」「ループしているんだよ」と語る通り、彼らは何度も同じような行動を繰り返す。一つの町の、家族に起こった歴史の中に、南米の歴史が語られる。滅亡の直前に、一家の最後の人間が100年前に書かれた預言書を読み解くと、そこには一家の歴史があらかじめ語られていたのだった。

興隆から衰亡までを一気に読ませられて、読み終わると虚無感が残る。何より一番強烈に残ったのは、一家を繁栄させよう、生き延びさせようとした母ウルスラの個性。ウルスラの死と共に、一家の住む屋敷すら消滅への道を辿っていく。時として、死者が生きているかのように生者と語り、何千人もの死者が「正史」を作られることによって、存在すら無いことにされてしまう世界は、なんともいえず濃密。

元々書評を読んで気になっていた本があって、それを読む前に「予告された殺人の記録」を読もうと思い、更にその前段階として手に取った本なんですが、思いがけない凝縮された世界に圧倒された。
by yamanochika | 2010-08-22 13:07 | SF・FT
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