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午前零時のフーガ


レジナルド・ヒル著 ハヤカワ・ミステリ刊

周囲の早すぎるという反対を押し切って職場復帰したダルジール警視だが、体は本調子とはいえず、以前のような働きが出来ない。そんな中、ある女性に失踪した夫探しを依頼される。元刑事の夫は7年前に失踪し、死亡したものと思われいた。彼女は夫の上司である警視長と再婚する予定だったが、最近夫が写った雑誌記事が送られてきたのだと言う。写真に写っているのはこの付近のホテルだった。ダルジールは非公式に調査を開始するが…。

アメリカのドラマの向こうを張って、16時間(うち昼寝2時間)でスピーディに事件が進展する。精神的にはリハビリ中のダルジールが自分を取り戻すまでの物語といえるだろか。危ういところを綱渡りしながら巨漢が普段の自分らしさを取り戻していく。ダルジールと、パスコーの関係の再構築の話ともいえるのかな。ウィールドの、ダルジールへの信頼が実はパスコーへの友情より厚いものだったことにびっくりしました。おなじみのヘクター巡査が相変わらずいい味を出していて、彼らの元気な様子を見れたのも嬉しい。

話の背景になっているのは暗黒街からのし上がった実業家の物語。ダルジールやパスコーとは関係ない所で、彼が行った事がやがて彼自身に戻っていく。登場人物たちによるドラマを表に出して、その背後にねっとりした闇みたいなものが感じられるのもこのシリーズの魅力の一つだと思う。
by yamanochika | 2011-01-21 01:21 | 海外ミステリ
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