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アーサー王の墓所の夢



アリアナ・フランクリン著 創元推理文庫刊

火災によって焼失したグランストンベリー大修道院の墓地から掘り出された二体の人骨。それは伝説のブリトン人の王アーサーとその妃のものなのか?ウェールズ人との紛争にう業をにやした国王ヘンリーは、住み慣れた町を追われた女医アデリアにその骨がアーサー王のものであるかを鑑定するように命じる。アデリアはグランストンベリーへ赴くが、途中までの道のりを共にしたエマの一行が行方不明になっており、更に彼女達の調査を辞めさせようとする妨害工作が…。

12世紀のイングランドを舞台にサレルノで教育を受けた女医アデリアが主人公を務めるシリーズ3作目。

大学で解剖学を学び、遺体を見ることに慣れているアデリアにとっても骨がいつの時代のものかを鑑定する技術は無く、王の依頼は困難を極める。結局骨ではなく回りに埋められていた物から判断をする事になるんですが、扱っているのが伝説の王だからか、今までない神秘体験があったり、全体的に伝説の世界を垣間見ているような雰囲気があります。実際に伝説の剣エクスカリバーが発見されヘンリー王に捧げられるという事があったようですが、これはヘンリーによるウェールズ人向けのパフォーマンスかもしれません。

本作中では幻想的な出来事にも合理的な解決方法が提示され、エマの一行が消失した謎も、綺麗に解き明かされており、伏線の張り方は今までよりも上手くなっていると思います。ロウリーの活躍が少なかったのが若干残念ですが。一番の見処は、ヘンリーによる法廷改正。それまで決闘裁判から、弁護士をたてて証人や事実を争う裁判により、血が流れることなく争いが解決していく。

基本的には王に利益が集まるように出来ている仕組みなんですが、ヘンリーが非凡な王であったことを示す一例として上手いエピソードだと思う。
by yamanochika | 2013-08-18 00:05 | 海外ミステリ
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