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消えた消防車

M・シューヴァル&P・ヴァールー著 

刑事マルティン・ベックシリーズ第5弾。
厳寒のストックホルム。警察が監視中のアパートが突如爆発し、監視任務についていたグンヴァルト・ラーソン警部補は住人の共助活動に孤軍奮闘するが、出勤したはずの消防車がいっこうに到着しない。いったんは、爆発は焼死者の中にいた犯罪者の自殺による事故だったと決着が付きそうにになるが、火災を引き起こした火花はどこからきたのか判然としない。やがて浮かび上がってきたのは奇妙な犯罪の構図であった。

マルティン・ベックを主軸に、60年代から70年代のスウェーデン社会を活写した警察小説の第5弾。初期に比べると、刑事たちの個性が出ててきて、彼らの絡みが面白い。最初は脳みそが筋肉でできているような男にしかみえなかったラーソンが、ほぼ一人で火災現場から被害者の救助を行い、独自の捜査で事件の真相に近づいていく。マルティン・ベックよりも彼の方が味があるかもしれない。北欧から東欧にかけての犯罪ラインが事件の引き金となり、一つずつの事実を検証していくことで、事件が解決していくが、その進みは緩やかで、その緩やかさにリアリティがある。
通報があったはずなのに、火災現場に到着しなかった消防車。そして、誰も出入りしていないはずの家から忽然と消えたおもちゃの消防車。その真相の解明がなんともいえず鮮やか。

by yamanochika | 2018-07-08 13:59 | 海外ミステリ
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