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被害者のV

ローレンス・トリート著。ハヤカワ・ミステリ刊。

世界で一番最初に書かれた警察小説として名高い作品の第一作目。警察小説と警察小説風本格推理小説との境目がいまいち分からないんだけど、どうやら警察の組織力を使って捜査を進め、(現実の警察と同じく)複数の事件を平行して捜査し、一人の有能な探偵役が事件を解決するのではない、小説のことを警察小説と位置づけるようです。ちなみに、アルファベット順にタイトルを付ける…という元祖もこの作品。今ではスー・グラフトンの方が有名になってしましましたが。

深夜に起きたひき逃げ事件。通報を受け駆けつけたミッチは、ひき逃げの直前にアパートから悲鳴が聞こえたという証言を受け、鑑識を呼び寄せる。悲鳴を上げた女性の部屋では猫が死んでおり、女性は原因不明の火傷を負っていた。更に、彼女が待ち合わせをしていた男性がホテルの部屋で撲殺されており、彼女に疑いがかかる。しかし、鑑識のジャブ・フリーマンの尽力により、ひき逃げ事件と殺人事件が同一事件の可能性が高まり…。

1945年、第二次大戦のさなかを舞台にしているだけあって、現在と比べると鑑識や物的証拠に対する見方がぞんざいなのに驚かされるけど、その時代性が感じられるのが面白い。地味な捜査と、刑事達の協力、地道な努力で事件が解決に導かれていく様に共感出来る。派手さやトリッキーさに疲れた時には特にお勧め。
by yamanochika | 2006-07-23 23:10 | 海外ミステリ
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