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死より蒼く

フィオナ・マウンテン著。講談社文庫刊。

系図を辿り、家族の歴史を紐解く「家族史探偵」をしているナターシャ。ある日、19世紀末のラファエル前派の絵を写真で再現しようとするプロジェクトに参加している若いモデルベサニーと知り合うが、彼女は祖母から受け継いだ日記と謎のメモを残して失踪してしまう。本名も住所も謎のままで。ベサニーの恋人から依頼を受け、ナターシャは普段とは逆に、ベサニーの祖先からベサニーの行方を突き止めようとするが…

現在の謎と、19世紀末の美術界に大きな影響を与えたラファエル前派の謎が絡み合って歴史の謎が一つ明かされていく…という趣向は面白いと思うのですが、あいにくラファエル前派と言われても、かろうじて分かるのがミレイ作「オフィーリアの水葬」くらいという私にはいまいちピンときませんでした。あの絵のモデルを務めた女性が若くして悲劇的な死を遂げた、とか水辺に浮かんでいる花一つとってもメッセージが込められていて、無駄に描かれた物は無い…というのには感心したんですが。

ただ、系図や出生・死亡の記録、色々なものから一つの家族の歴史が照らし出されていく様には感心。ちょっと偶然や幸運に恵まれすぎてやしないか、という思いはなきにしもあらずですが。
by yamanochika | 2006-11-12 00:34 | 海外ミステリ
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