テリー・プラチェット著。あすなろ書房刊。
テリー・プラチェットが初めて子供むけに書いたディスクワールド・ノベルズ。子供向けってことでタイトル見て敬遠していたんですが、ディスクワールドの話だというので手にとってみました。…すみません。プラチェット先生が素直な子供向けの話を書くはずがないですよね。私が間違ってました。物事を斜めに見る、パロディとシニカルな笑いに満ちたディスワールドの魅力満載。ものっそ面白かったです。 下敷きとなっているのはハーメルンの笛吹き男。見えない大学の裏手に住んでいた野良猫のモーリスはある日突然、自分が知能を持っていることに気付く。同じく知能を持ったニュー・ラットたちとぼんやり顔の笛吹少年と手を組んで、笛吹男の商売で金儲けをしていたが、最後の仕事場にしようと乗り込んだ街は何かがおかしい。ネズミが大暴れしているという話なのに、街の地下にはネズミ一匹いやしない。モーリス達は町長の娘マリシアと街の謎を探ろうとするが、その前に恐るべきネズミ王が現れる。 知能をもったネズミ達の社会は、かつて、生きることだけを考えれば良かった時代から離れて、徐々に複雑さ、哲学を必要にするようになっていく。アルビノで目もよく見えないけれど、誰よりも知能のあるネズミ、デンジャラスビーンズが、思考の果てに、最後に真に恐るべき闇は自分の中にある闇だけだ、と行き着く場面は秀逸。その前にあるネズミたちの戦いや、やり取り、人間達の行動の醜さ。パロディと笑いの中に紛れて、人間社会へのシニカルな視点が突き刺さる。 そんな事とは関係なく、モーリスは猫らしくずるがしこく、しかし自分本位になろうとすれば、新しく頭の中に現れた良心というものに邪魔され(笑)、ネズミ達を助けてしまうという。ディスクワールドではお馴染みの死に神がゲスト出演したり、本物の笛吹男からのアドバイスも面白い。ハッピーエンドでは無いけれど、まあそれなりに上手くいっている、という最後もいい。
by yamanochika
| 2007-05-22 00:26
| 児童文学
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