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流血女神伝 喪の女王8巻

須賀しのぶ著。コバルト文庫刊。

とうとう終わったなーという感じで今呆然としてます。「帝国の娘」からリアルタイムで買い続けていたので8年間。長かったです。ドラマのクライマックスがルトヴィア帝国の崩壊で幕を閉じ、最後の方は駆け足で走り抜けてしまった感があるので、もう少しあの人達がどうなったのかを書いて欲しかった。結局消息が分からないままの人達も多いし。でも思えばキルゾーンの終わり方もこんなでした。最後が、ドーン兄上の原初の光についての言葉で終わったのは締めらしい締めで良かった。何はともあれ長いお話をお疲れ様でした。

ルトヴィア侵攻が話の半ば過ぎくらいに来ると思っていたけど、蓋を開けてみたら最後の舞台がルトヴィア侵攻と帝国の崩壊だったんですね。須賀先生が書きたかったのは、帝国が崩壊していく過程だったのかなーとも思ってます。帝国の娘では矛盾を抱えながらも3カ国の中で一番の大国として描かれていたから、最後の崩壊と、「帝国」は無くなっても国民が少しでも助かるように模索するドーン達の動き、何よりドーンの最後の演説は感慨深かった。ここに辿り着くまでに、今までのストーリーがあったんだという感じ。欲を言えば、タイアークに乗り込んできたイーダルの戦後処理や、バルアンとの折衝、何故エティカヤが退却したのかという所までは書いて欲しかった。

ドーンとグラーシカの関係や、グラーシカがルトヴィアの人間として生きていく様、何よりグラーシカの生き様は美しかった。美しくなくても、生きていてくれた方が嬉しいけど、グラーシカ姉さんらしい最後でした。
イーダル皇子は7巻のあれから見事に復活してくれて嬉しい限り。結局鉄拳制裁が一番効くっていうことなんですか(笑)。という冗談はさておき、アルガに見捨てられずに済んで良かったよ。

サルベーンの変貌にも驚いたけど、トルハーン。最後を見る限りでは、今も海賊島でバカをやっている元気に過ごしているようですが、彼にとって命の次に大切なものは海での戦闘で、それはもう二度と味わえないんですね。

バルアンもここが最後の輝きだったんだろうなあ。私は「砂の覇王」での彼に惚れこんでいたので、あの頃の飄々とした、つかみ所のない魅力のあった男にはもう戻れなかったんだ、というのがとても残念。40代頭位と考えると、かなり早死ですよね。でも、アフレイムが母親を捜そうとしてくれたのは、ナイヤやフィンルの影響があったからだろうと思うと、あのひ弱そうな男の子がきちんと成長してくれたようで嬉しい。

全体として終わって呆然としているのは、最後が怒濤の展開だったことと、結局分からなかったことが色々あるからなんですが、まずエアリシアの生死。ドーンは家族との情愛を捨ててルトヴィアとその民を救ってもう家族とは会わないつもりのようですが、そもそもエアリシアは生死が不明のままだったので。というか、性別も不明なんだけど。結局どっちだったんだろう。

後、サルベーン。あの様子では10年後には亡くなっていてもおかしくはないけど、ラクリゼには会わないままだったのかな。あの二人はもうどうしようも無かったんでしょうか。10年後もラクリゼは元気に過ごしているみたいだから余計気になる。ユリ・スカナがその後どうなったのかもはっきりはしてないし。血統が正しければ国王として適任かといわれるとそんなこともないしなあ。

カリエはさらっとエドと結婚して子供まで作ってましたが、兄妹同然の関係から男女の仲になるまでの過程を書かない所が須賀さんらしいですよね…。女神様は不肖の息子を連れてこの世界を去っていき、カリエはひっそり一市民としての生活を満喫していて、カリエと女神様の物語についてはきちんと完結したんだ、と納得してます。でも、人間達の物語については物足りないというかもどかしいというか。まだ終わった感じが全然しない。子供達世代のお話を書きたいと須賀さんも思っているみたいなのでぜひお願いしたいです。
by yamanochika | 2007-11-01 00:38 | ライトノベル
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