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列の中の男 グラント警部最初の事件

ジョセフィン・ティ著。論創社刊。

論創社海外ミステリの1冊。
もうすぐ千秋楽を迎える大人気ミュージカル。そのチケットを求める人達で長蛇の列が出来ている中、並んでいた一人の若者が倒れると、その背中には短剣が刺さっていた。衆人環視の中で起きた殺人事件。容疑者を追ってグラント警部は捜査を開始するが…。

ジョセフィン・ティのデビュー作。大勢の人がいる中で、倒れた男を見たら殺されていた、というと一見トリックが重視される話のようにみえますが、むしろ容疑者が判明する様子、グラントがその青年を追跡する様がサスペンス風に描かれ、そちらの方に力点が入った作品になっています。そこに力点があるから最後の意外な犯人に意外な動機が映えてくるわけですが、これの次に書かれた「ロウソクのために1シリングを」がほぼ同テーマで書かれていて、犯人が判明する場面はあちらの方が一歩上手。受賞作とその後の作品での作者の成長ぶりが伺われます。
書こうとしているテーマがやや違うので、こちらはこちらで楽しめるのですが。

後、後書きにあるように、翻訳は多い作家さんなのですが、古い作品は翻訳文自体が古く読みにくいというのは同感。新訳で現在に即した文体での再出版が進むことを願ってます。
by yamanochika | 2007-11-27 00:59 | 海外ミステリ
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