<   2017年 12月 ( 5 )   > この月の画像一覧

容疑者

容疑者
ロバート・クレイス著、創元推理文庫刊。

パトロール中に銃撃され相棒を失った刑事スコットと、戦争で大切な相棒を失った軍用犬のシェパード、マギーの出会いを描いたシリーズ。

作中で解決される事件自体は謎が少ないと言うか、おおやそこうなるだろうと思った通りに展開していくんですが、傷を負ったマギーとスコットの心の傷の描写、1人と1匹が仲間となり絆を築いていく描写が素晴らしい。犬好きにはたまらない作品ではないか。

[PR]
by yamanochika | 2017-12-24 20:58 | 海外ミステリ

その女、アレックス

その女、アレックス
ピエール・ルメートル著。文春文庫刊。

すごいすごいと言われていたけど、確かに凄かった。
まず冒頭は、アレックスという若い女性が中年の男に拉致された上、裸にされ小さな檻に閉じ込められる所から始まる。
生き延びるために戦うアレックスと、彼女の誘拐事件を解決しようと奮闘する警察の捜査が書かれ、サバイバルものなのかと思いきや、これは話の発端に過ぎない。
誘拐事件の捜査過程でアレックスが行なっていた犯罪が発覚し、物語はある事件の容疑者であるアレックスと、彼女を追う警察の物語へと様相を変えていく。そこから更に話か一変していく様は見事と言うしかない。
あらすじには孤独な女アレックスと書かれているけれど、確かにその言葉が一番話を言い表している。
個性豊かな刑事たちのやり取りも話の深みを増している。話としてはヴェルーヴェン警部シリーズになるのかな。彼らの他の事件も読んでみたい。


[PR]
by yamanochika | 2017-12-24 20:46 | 海外ミステリ
ファインダーズキーバーズ
スティーブン・キング著
文藝春秋刊

ビル・ホッジズを主人公にしたシリーズ2作目。
といっても前半は不況の為職を失い、職探しのため深夜から並んでいてメルセデス事件の犠牲者となった男の家族の話で物語が展開する。
10代の少年ピートは、家族を救うために偶然見つけたトランクの中のものを使い、結果的に窮地に追い詰められていく。
メルセデス事件の後、ビル・ホッジズは仲間とともに探偵社ファインダーズ・キーパーズを立ち上げてたのだが、ピートの妹ティナが彼らにピートの様子がおかしいと相談し、ピートの事件に関わる事になる。

ある作家と彼の作品に執着する男が登場するのがミザリーっぽい。粘着質で作家を脅迫するようなファンはファンと言えるのか。と言うのが冒頭の話で、全体的にはピートの頭の良さと家族思いな彼の冒険譚に手に汗を握りながら読み進める事になる。そうは言っても、ピートと犯人ほある意味表裏一体。ピートの暗黒面が犯人であり、自分もああなっていたかもしれないとピートが思う場面は、書痴であれば自分に当てはめて事実を突きつけられている感が。

次の作品への伏線も張ってありますが、どうも超常現象が組み込まれそうで少し憂鬱。今作が完全にミステリとして完成していたから、最終作だけ超常現象が入ってくるのは嫌だなあ。

[PR]
by yamanochika | 2017-12-15 19:45 | 海外ミステリ

晩夏の墜落 

晩夏の墜落 

ノア・ホーリー著
ハヤカワミステリ刊

8月の終わり。小さなリゾート島で富豪の妻と知り合いなった画家のスコットは、NYへ向かうためプライベートジェットに乗せてもらうが、飛行機が墜落。九死に一生を得るものの、助かったのはスコットと彼が救助した富豪の4歳になる息子のみ。
怪我を癒す間も無く、「英雄」となったスコットは調査委員会やマスコミのターゲットにされていく。

物語は飛行機が落ちた瞬間から、サバイバーとなったスコットが生きている現在と、生き残れなかった人達がまだ生きていた時間のそれぞれの視点で綴られていく。この話で強く意識させられるのは、彼らは単なる記号でもマスコミが面白おかしく取り上げるための題材でもなく生きていて、これこらも生きてやりたい事も沢山あった人間であり、突然生を断ち切られた犠牲者であるという事である。

飛行機が落ちた状況の調査は残骸が見つからないため難航し、乗り合わせていた人々が富裕層であった事からテロの可能性も疑われ、子供を抱えて10キロ以上泳いで生き延びたスコットは、当局からは容疑者として疑われ、扇情的な煽りを得意とするメディアからは富豪の妻と不倫関係にあったのではと騒ぎ立てられ、自分の家で生活する事すら出来なくなってしまう。

メディアの恐ろしさ、生き延びた人達を追い回し、彼らの生活を暴き立てる事を正義だと言い立てる気持ち悪さ。それが、最後の章に込められていて、この作品で一番強く訴えているメッセージのように感じる。

サバイバーの原作と、生き残れなかった人達の時間軸が一つになった時、時間はまた動き始めて、サバイバーのスコットもまた前に進み始める。ほのかな苦味がありながら、ポジティブな気持ちで終わっていく。いい作品だと思う。




[PR]
by yamanochika | 2017-12-15 19:41 | 海外ミステリ

樹脂

樹脂

エーネル・リール著 ハヤカワノベルズ刊

デンマークの僻地に住む一家。ほぼ自給自足で暮らす一家の暮らしは、何年かぶりに訪ねてきた祖母によって揺り動かされ、やがて破滅へと向かっていく。愛する者を突然失った経験から、男は変化を受け入れることが出来ない。子供の頃に父に見せられた、樹脂にくるまれ何年もたった虫のように、周りのものを留めることに執着していく。
妻を得、新しい家族が出来たことで好転するかに思われた男の生活は、新しい悲劇によって閉鎖的な方向に進んでいく。

彼の、彼の家族の樹脂にくるまれたような生活の様子が幼い娘の視点から、やがて男の家族や他の人間の視点から語られていく。おかしい、と切り捨てることは簡単だが、衝撃的な場面から始まった物語から目が離せない。語り口が上手く、まだ幼い少女の視点が入ることで物語に爽やかさがあり、男の悲劇をじっくり読ませる内容になっている。
全てが終わった後に、ひっそり怖さが残るのもいい。

[PR]
by yamanochika | 2017-12-13 23:14 | 海外ミステリ

日々読んだ本の記録。他映画、漫画等の感想などあれこれ。感想はネタバレありです。ご注意下さい。


by yamanochika
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31