容疑者

容疑者
ロバート・クレイス著、創元推理文庫刊。

パトロール中に銃撃され相棒を失った刑事スコットと、戦争で大切な相棒を失った軍用犬のシェパード、マギーの出会いを描いたシリーズ。

作中で解決される事件自体は謎が少ないと言うか、おおやそこうなるだろうと思った通りに展開していくんですが、傷を負ったマギーとスコットの心の傷の描写、1人と1匹が仲間となり絆を築いていく描写が素晴らしい。犬好きにはたまらない作品ではないか。

[PR]
# by yamanochika | 2017-12-24 20:58 | 海外ミステリ

その女、アレックス

その女、アレックス
ピエール・ルメートル著。文春文庫刊。

すごいすごいと言われていたけど、確かに凄かった。
まず冒頭は、アレックスという若い女性が中年の男に拉致された上、裸にされ小さな檻に閉じ込められる所から始まる。
生き延びるために戦うアレックスと、彼女の誘拐事件を解決しようと奮闘する警察の捜査が書かれ、サバイバルものなのかと思いきや、これは話の発端に過ぎない。
誘拐事件の捜査過程でアレックスが行なっていた犯罪が発覚し、物語はある事件の容疑者であるアレックスと、彼女を追う警察の物語へと様相を変えていく。そこから更に話か一変していく様は見事と言うしかない。
あらすじには孤独な女アレックスと書かれているけれど、確かにその言葉が一番話を言い表している。
個性豊かな刑事たちのやり取りも話の深みを増している。話としてはヴェルーヴェン警部シリーズになるのかな。彼らの他の事件も読んでみたい。


[PR]
# by yamanochika | 2017-12-24 20:46 | 海外ミステリ
ファインダーズキーバーズ
スティーブン・キング著
文藝春秋刊

ビル・ホッジズを主人公にしたシリーズ2作目。
といっても前半は不況の為職を失い、職探しのため深夜から並んでいてメルセデス事件の犠牲者となった男の家族の話で物語が展開する。
10代の少年ピートは、家族を救うために偶然見つけたトランクの中のものを使い、結果的に窮地に追い詰められていく。
メルセデス事件の後、ビル・ホッジズは仲間とともに探偵社ファインダーズ・キーパーズを立ち上げてたのだが、ピートの妹ティナが彼らにピートの様子がおかしいと相談し、ピートの事件に関わる事になる。

ある作家と彼の作品に執着する男が登場するのがミザリーっぽい。粘着質で作家を脅迫するようなファンはファンと言えるのか。と言うのが冒頭の話で、全体的にはピートの頭の良さと家族思いな彼の冒険譚に手に汗を握りながら読み進める事になる。そうは言っても、ピートと犯人ほある意味表裏一体。ピートの暗黒面が犯人であり、自分もああなっていたかもしれないとピートが思う場面は、書痴であれば自分に当てはめて事実を突きつけられている感が。

次の作品への伏線も張ってありますが、どうも超常現象が組み込まれそうで少し憂鬱。今作が完全にミステリとして完成していたから、最終作だけ超常現象が入ってくるのは嫌だなあ。

[PR]
# by yamanochika | 2017-12-15 19:45 | 海外ミステリ

晩夏の墜落 

晩夏の墜落 

ノア・ホーリー著
ハヤカワミステリ刊

8月の終わり。小さなリゾート島で富豪の妻と知り合いなった画家のスコットは、NYへ向かうためプライベートジェットに乗せてもらうが、飛行機が墜落。九死に一生を得るものの、助かったのはスコットと彼が救助した富豪の4歳になる息子のみ。
怪我を癒す間も無く、「英雄」となったスコットは調査委員会やマスコミのターゲットにされていく。

物語は飛行機が落ちた瞬間から、サバイバーとなったスコットが生きている現在と、生き残れなかった人達がまだ生きていた時間のそれぞれの視点で綴られていく。この話で強く意識させられるのは、彼らは単なる記号でもマスコミが面白おかしく取り上げるための題材でもなく生きていて、これこらも生きてやりたい事も沢山あった人間であり、突然生を断ち切られた犠牲者であるという事である。

飛行機が落ちた状況の調査は残骸が見つからないため難航し、乗り合わせていた人々が富裕層であった事からテロの可能性も疑われ、子供を抱えて10キロ以上泳いで生き延びたスコットは、当局からは容疑者として疑われ、扇情的な煽りを得意とするメディアからは富豪の妻と不倫関係にあったのではと騒ぎ立てられ、自分の家で生活する事すら出来なくなってしまう。

メディアの恐ろしさ、生き延びた人達を追い回し、彼らの生活を暴き立てる事を正義だと言い立てる気持ち悪さ。それが、最後の章に込められていて、この作品で一番強く訴えているメッセージのように感じる。

サバイバーの原作と、生き残れなかった人達の時間軸が一つになった時、時間はまた動き始めて、サバイバーのスコットもまた前に進み始める。ほのかな苦味がありながら、ポジティブな気持ちで終わっていく。いい作品だと思う。




[PR]
# by yamanochika | 2017-12-15 19:41 | 海外ミステリ

樹脂

樹脂

エーネル・リール著 ハヤカワノベルズ刊

デンマークの僻地に住む一家。ほぼ自給自足で暮らす一家の暮らしは、何年かぶりに訪ねてきた祖母によって揺り動かされ、やがて破滅へと向かっていく。愛する者を突然失った経験から、男は変化を受け入れることが出来ない。子供の頃に父に見せられた、樹脂にくるまれ何年もたった虫のように、周りのものを留めることに執着していく。
妻を得、新しい家族が出来たことで好転するかに思われた男の生活は、新しい悲劇によって閉鎖的な方向に進んでいく。

彼の、彼の家族の樹脂にくるまれたような生活の様子が幼い娘の視点から、やがて男の家族や他の人間の視点から語られていく。おかしい、と切り捨てることは簡単だが、衝撃的な場面から始まった物語から目が離せない。語り口が上手く、まだ幼い少女の視点が入ることで物語に爽やかさがあり、男の悲劇をじっくり読ませる内容になっている。
全てが終わった後に、ひっそり怖さが残るのもいい。

[PR]
# by yamanochika | 2017-12-13 23:14 | 海外ミステリ

王とサーカス

王とサーカス

米澤穂信著 東京創元社刊

新聞社を辞めてフリーのジャーナリストとなった太刀洗万智は、取材のため訪れたネパールで国王一族の殺害事件に遭遇する。

2001年にネパールで起きた王族殺害事件を背景に、ジャーナリストとして何を書くのか、なぜ書くのかを問いかけた作品。作中で起きた別の殺人事件の真相を主人公が突き止める描写はあるものの、作品の主題はジャーナリズムとは何か。記事にする為に取材対象をサーカスのような見世物として扱って良いのか、といった所に行き着く。
後味の良い作品では無いけれど、何かは残る話だった。

[PR]
# by yamanochika | 2017-11-05 06:35 | 国内作家
ジュリー・ベリー著 創元推理文庫刊

10代の少女7人が在籍する小規模な寄宿学校で、日曜日の夕食中、校長先生とその弟が突然息絶えてしまう。それぞれの事情から家に帰りたくない生徒達は事実を隠ぺいし、学校生活を続けようと奮闘するのだが…。

19世紀末のイギリス、良家の子女の為のフィニッシングスクールが舞台。冒頭に作中には登場しない、生徒たちに関係のある人物の紹介があり、まずはこの学校に在籍することになった女生徒たちの人となりが読者に示される。彼らの事情や性格が提示された状態でショッキングな事件から物語の幕が開けるわけですが、死を隠ぺいしようとしてもなかなか上手くいかず、次から次へとやってくる訪問客にあたふたしつつ、とっさの機転を利かせてピンチを切り抜けいく様が面白い。
最初の舞台設定からブラックユーモアかと思いきや、10代の少女らしくパーティや身近な男性に心をときめかせたり、少女たちのキュートさが全面に出た冒険小説といったところでしょうか。伏線や小道具もばっちり揃えられ最後は探偵役を務める少女により事件の真相が暴かれるので、推理小説としてもよく出来た作品。

[PR]
# by yamanochika | 2017-10-20 23:41 | 海外ミステリ
ヨン・ヘンリ・ホルムベリ編
ヘレンハルメ美穂・他訳
ハヤカワ・ミステリ刊

スウェーデン作家による短編ミステリ17篇を集めたアンソロジー。
冒頭に編者によるスウェーデンミステリの歴史、また本アンソロジーに収録された作家の簡単な紹介があり。収録されている作品は様々ですが、おそらく一番の目玉は「ミレニアム」シリーズの著者スティーグ・ラーソンによる短編になるのでしょうか。
短編を集めたということで正統派のミステリよりも、少しひねった作品やホラーのような味わいの作品も多いですが、個人的に一番満足したのはヨハン・テオリンによる「乙女の復讐」。エーランド島四部作では漁師を引退し、年老いた姿で登場するイェルロフがまだ現役時代の話。シリーズ中で亡くなった人も元気な姿で登場し、シリーズファンとして感慨深い。


[PR]
# by yamanochika | 2017-10-20 23:18 | 海外ミステリ

霧の島のかがり火

霧の島のかがり火

メアリー・スチュアート著
論創社刊

ロンドンでファッションモデルをしているジアネッタはエリザベス2世戴冠式の人混みを避け、休暇でスカイ島を訪れる。島では数週間前に儀式殺人を思わせるような殺人事件が起きており、事件現場となった山はどこか不穏な雰囲気が漂っていた。そんな中再び事件が起き…

ロマンティックミステリと言うか、サスペンス。ヒロインのキャラクター造形や山に漂うどこか神秘的な雰囲気が最後まで損なわれないのはいい。ある意味山や島の雰囲気が事件に密接に関わっているので、背景込みで楽しむ作品だと思う。

作家さんの名前が歴史上の人物と被っているので驚きましたが、本名だそう。最近映画化されたメアリと魔女の花の原作者でもあるんですね。見てみれば良かった。

[PR]
# by yamanochika | 2017-10-08 18:04 | 海外ミステリ

フロスト始末

R・D・ウィンクフィールド著 創元推理文庫刊。

フロスト警部シリーズ最終刊。
買ってから読み終わるのが勿体なくて1ヶ月位寝かせていたんだけど、読み始めたらあっという間に読み終わってしまった。

相変わらず他の署の応援に人員が割かれ人手不足なデントン署。そんな中で少女の連続強姦事件や、ローティーンの少女が行方不明になる事件が勃発。更にスーパーへの恐喝事件など次々に事件が起きる中、マレット署長がフロスト警部を追い払う為に他の署から呼び寄せたスキナー主任警部により、デントン署からの異動を余儀なくされたフロスト。事件捜査とフロストの運命や如何に。

今作では若かりし頃の妻と自分を思い出し涙ぐんだり、老いを感じるシーンも多くどことなく侘しさの漂うフロスト警部。
作中で同時進行に起きている事件が終盤に収束していく繋がりの上手さは健在ではあるものの、作中のキャラがエネルギッシュで、若さがあったフロスト日和などと比べるとエネルギー不足は否めない。
それでもなお、どれだけ泣き言を言っていても事件を解決するために駆け回るフロストの姿に滲み出る人間味がこのシリーズの最大の魅力であり、味わいだと思う。そしてもう1つの味である下品なユーモアも健在。
シリーズファンなら頭のてっぺんからつま先まで楽しめる作品になっている。



[PR]
# by yamanochika | 2017-08-14 22:10 | 海外ミステリ

日々読んだ本の記録。他映画、漫画等の感想などあれこれ。感想はネタバレありです。ご注意下さい。


by yamanochika
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28