農場にくらして

アリソン・アトリー著。岩波少年文庫刊。

アリソン・アトリーの自伝的小説、「カントリー・チャイルド」の完訳版。農場に暮らす幼い少女スーザンを主人公に、農場を巡る四季を書いた話。

お話としては、何か事件があって盛り上がるということはなく、ただ淡々と起きたこと、スーザンの回りの出来事、四季の移り変わりが語られていく。「時の旅人」のルーツが見たくて読んだのだけど、幼いスーザンが時の向こうに渡って自分を追いつめる行動を取るチャールズ1世を救いたい。けれどそれは出来ないことなのだ、という想像を巡らす時や、あるいはジェントリであるハリー卿一家の話、そしてエリザベス朝時代から建つ農場の建物そのもの…といった場所に、確かに「時の旅人」が生まれる過程があったのだと感じた。
あるいは目に見えない何か、小さな女の子を脅かした「ものたち」がうごめく森の中に。
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# by yamanochika | 2004-10-19 01:41 | 児童文学
V・F・アルミニヨン著。大久保昭男訳。講談社学術文庫刊。

今度は幕末に通商条約を結ぶために来日したマジェンタ号艦長兼イタリア公使による日本見聞記。日本への来訪は外交目的と学術的調査を兼ねており、特に日本の歴史に対する知識は簡易ながらも正確。知識の豊富さに驚かされる。また時系列にそって通商条約の締結までが書かれているので、当時の日本の情勢の変化、ヨーロッパや周辺諸国の動きなどが手に取るように分かる。(その点スエンソンの日本記は時系列がかなり不正確で分かりづらかったので)
文化や庶民の風俗などはやはりシュリーマンの記述が一番客観性にすぐれていると思うのだが、公式の使節でなければわかり得ないような知識が生かされた史料となっている。
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# by yamanochika | 2004-10-17 16:43 | その他読んだもの
エドゥアルド・スエンソン著。長島要一訳。講談社学術文庫刊。

外国人から見た幕末日本見聞記第二弾。今度は、デンマーク人のフランス海軍士官、スエンソンによる著書。シュリーマンの本と続けて読んだためどうしてもシュリーマンの見聞と比較してしまう。文化や風俗、日本の歴史といった事柄は他の人が書いた著書を参考にした内容が多く、記述が正確であるとはとてもいえない。3ヶ月しか滞在しなかったシュリーマンのほうがよほどよく観察している。しかし、本人の感想を交えた描写や各地の地理、軍隊や船に関する事柄は詳細で、わけても海軍については非常に正確である。結局は当人の興味がどの辺りにあったか、という問題なのだろう。
シュリーマンもスエンソンも声を揃えて褒め称えているのが日本の識字率の高さと教育水準の高さ。同時に嘆いているのが宗教的無関心さ。特に前者については徳川幕府の最も誇るべき業績ではないだろうか。

彼の日本に関する描写からは(かなり好意的な人物からでさえ)日本が外国からどのように見られていたか、どの程度の地位にあったかということが窺えて興味深い。
また海軍士官であったスエンソンは末端の人物ながら慶喜公に招かれて大阪城に行き、対面も果たしている。慶喜公の様子、式典で普通の人々がどのように行動していたか、等が書かれた大阪城の場面がスエンソンの日本見聞記のクライマックスをしめる。

スエンソンはその後デンマークに戻り生涯日本と関わりのある生活を送ったそうで、その後も多くの日本に関する論文を書いているとか。その後の日本に関する描写はどのように変わったのか。ぜひ読んでみたい。
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# by yamanochika | 2004-10-16 01:32 | その他読んだもの
ハインリッヒ・シュリーマン著。石井和子訳。講談社学術文庫刊。

トロイ遺跡を発掘する6年前、シュリーマンは世界一周旅行に出かけ、その途上で当時開国したばかりの日本に立ち寄った。本書はその旅行記の中から清国及び日本についての記述を翻訳したものである。
シュリーマンが訪れたのは1865年、江戸には14代将軍徳川家茂がおり、揺れに揺れていた幕末。しかしたった3ヶ月の短い訪問ながらシュリーマンの観察眼は鋭く、日本の風俗や住民の様子などを客観的にかつかなうる限り正確に描写している。なんと言っても素晴らしいのは彼の観察にはほとんどアジア風俗への蔑視や偏見がないことだろう。
物事をありのままに捕らえ、なおかつ自国の尺度を押しつけない。この姿勢があるからこそシュリーマンは他の誰もが信じなかったトロイ発掘がなしえたのだろうと素直に納得出来る。

また、彼の好奇心の強さ、行動力も感服に値する。一般旅行者として日本を訪れ、特別な許可がなければ入れない江戸に入るためにどのような伝手を辿ってか許可証を取り付ける。しかも相次ぐ外国人襲撃で、当時江戸に滞在していたのは外交官の代理をしている男性ただ一人であった、という状況で。もちろん屋敷にこもっていることなどせず、行ける限りの江戸の名所にも足を向けている。さすがに民間人である彼は大名屋敷の中や江戸城に入ることは叶わず、せめて将軍家の墓地が見たかったという記述だけが残っている。

江戸、横浜の美しさ、質素に生きる人々の様子など、内から見ればまた違う視点もあるだろうが外から見たその描写は美しい。無駄なものを持たず、簡素に生きる日本人へシュリーマンはあらん限りの褒め言葉を贈っている。悲しいことに、今の日本とはかけ離れた世界なのだが。
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# by yamanochika | 2004-10-16 01:02 | その他読んだもの

西武優勝!

プレーオフ面白かった!特に応援しているチームがないから気楽に楽しめたよ。いい試合が見られて満足。でも、試合やってる人にとってはいい試合だった、じゃ駄目なんだよね。王監督の言葉が心に染みます。王さんのファンなので、どちらかというとダイエー応援してたんだけども。リーグは長丁場だけど短期決戦でそれが覆ることがある、っていうのが盛り上がるんだろうな。

ところで伊東さんの顔を初めてテレビでまじまじと見たのですが、何だか近親感が。何でだろうと思ったら友達の彼氏に顔が似てる。何度見直しても似てる。つうことはアレだ、舞の海に似てるんだ。

大リーグもいつの間にかレッドソックスとヤンキースの対戦に。くたばれヤンキース!と叫ぶためにもヤンキースには憎たらしい位強いチームでいて欲しい。
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# by yamanochika | 2004-10-13 00:53 | 雑感

今度の

ハヤカワの今月の予告見たらイアン・ランキンの新刊が早くも出るらしい。早。って早いのは嬉しいんだけど何故か上製版。値段はポケミスと大して変わらないからいいんだけど、本棚に並べるときに不揃いになるじゃないか。ってことでちょっぴり不満です。うえーん。
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# by yamanochika | 2004-10-11 23:03 | 雑感
エドワード・D・ホック著。創元推理文庫刊。

不可能犯罪をサム・ホーソーン医師が解決する事件簿の3冊目。日本独自編集で本国ではまだ2冊目しか編集されていないのだとか。既に4冊目が編めるくらいの量の作品が発表されているので次が気になるところ。
トリックを生かした小説を書くにはやはり短篇が一番だということを実感。アメリカ地域史としてはついに禁酒法が廃棄されルーズヴェルトが大統領に。第二冊目で、ポリオ患者のフランクリン・ルーズヴェルトが州知事に立候補した、という話題が出ていたので何だか感慨深い。この後アメリカは第二次大戦へと突き進んでいくのだけれど。
一番印象に残ったのは巻末のボーナス短篇「ナイルの猫」。この作品は不可能犯罪を取り扱ったものではないのですが、犯人がなぜほぼ初対面の何の恨みも抱いていない、その男から直接利益を受けることのない相手を全くの正気で、利益を得るために殺害したのか。その動機の異様さと、確かにそれが成立しうることに驚いた。
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# by yamanochika | 2004-10-11 23:00 | 海外ミステリ

彩雲国物語

雪乃沙衣著。角川ビーンズ文庫刊。

実は(大変失礼ながら)メイト限定で配ってたまるマのペーパーが欲しくて購入したのですが、割と面白かった。お嬢様が町の人から慕われている理由や人柄がきちんとエピソードがついて書かれてたのが好印象。主上とお嬢様の関係は少女小説(というか少女漫画?)の王道で、この二人の話は好きなんだけど、老人の正体が実はアレだったーってのがちょっと唐突な感じ。というか、爺は普通に爺のままの方が良かったなー。

主上に仕える要人二人の関係が何かホモっぽいのもちょっと嫌かも。ホモが嫌っていうより別に要素として話の中に必要だと感じられないのに唐突に入れられてる感がするのが嫌なのね。

読んでて気になったのはその辺りだけで、後はまあ面白いと思いつつ読めました。続きは何冊か出てるみたいなので、お嬢様と主上がメインになってるなら読んでみたい。

でもってまるマペーパーは本編で出られなかったお詫びのようにグウェンが出てました。本編で大活躍しているギュンギュンも出てました。ちょっと可哀想な目に遭う人っていうのがグウェンの定位置なのかしら。笑ったけどさ。グウェン見てると癒されるなあ。
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# by yamanochika | 2004-10-08 02:00 | ライトノベル

そういえば

ジオシティーズが統合されたので、サイトのURLが変わりました。ここに書いても仕方ないような気もするけど、一応新しいURLが


http://www.geocities.jp/yamano_crossroad/


になります。どこか別の場所に行くか考え中なんだけど、まあ一応。ほとんど休眠状態だし。後、こないだトップ変えた時に「天ばか」ページを外しました。
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# by yamanochika | 2004-10-06 03:04 | 雑感

ゲド戦記外伝

アーシュラ・K・ル=グウィン著。岩波書店刊。

ゲド戦記短編集。ゲドの時代を中心に、アースシーの歴史からこぼれたエピソードを集めた作品。ゲド戦記5巻に先立ってまとめられたもので、何はともあれ(アースシーの物語はこれからも語られるかもしれないが)ゲド戦記としてはこれが最後の書になる。

若者が老人になるように、あるいはワインが熟成するように、ゲド戦記も初期の頃とは雰囲気を変え、熟成されてきた。若者の情熱や大胆さは失われたとしても、老人の老成した暖かみ、人生の豊かさを感じられる今作はアースシーの物語の集大成と言えるのではないか。

ここに書かれているのは暗黒時代の中期と後期の話で、暗黒時代とはつまり物事のバランスが取れなくなり、人々が二つに分かたれていた時代なのではないか。この後の世界がどうなるのかは、既にこれに先立って翻訳された5巻で明らかにされているわけですが。

幾つかの短篇の中で一番強く心に残ったのは、ゲドの魔法の師匠の師匠の話である「地の骨」。ダンマリとそう名付けた師の絆、ダルスが一番最初に選んだ師匠とその人から伝わったこと。そういったものの全てが心に響いてくるお話。
後は、ロークの学院を最初に築いた人々の話「カワウソ」。イヌとカワウソの話が好き。
ゲドが大賢者であった時代の話「湿原にて」。これを読んでから「トンボ」を読むと、トリオンの変貌が悲しい。もっとも、トンボは既に「伝説は永遠に」の中で「ドラゴン・フライ」として紹介されているので初読ではないのですが。
「ダークローズとダイヤモンド」は何だかいまいちピンと来るものが無かった。ただ、ダイヤモンドの母親には共感するというか、感心したんだけども。

巻末にアースシーの歴史、文化、人種等に触れたアースシー解説付き。アースシーの詳細な地図が付いているのも嬉しい。訳者の清水真砂子さんの後書きを読むとしみじみ完結したんだなーという感慨が。
最後の作者の言葉、

「物事は変化するものである。
作者も魔法使いも必ずしも信用できる者たちではない。
竜がなにものであるかなど、誰にも説明できない」

がゲド戦記について、もっともよく表現された感想だと思う。
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# by yamanochika | 2004-10-06 03:00 | 児童文学

日々読んだ本の記録。他映画、漫画等の感想などあれこれ。感想はネタバレありです。ご注意下さい。


by yamanochika
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